刺激的な出来事もたまにはいいけれど、毎日はおだやかに過ぎていくもの。なにげない小さなしあわせの積み重ねが、日常を彩るのかもしれません。たとえばそう、おいしいクッキーやホットミルクのように。
ティータイムはときに、どんな言葉よりも最強のパワーをくれるもの。2人の女性のティータイムをのぞいてみましょう。
小さなしあわせの使者「プラリネ」がやってきた - 25歳A子のティータイム
近ごろなんだかついていない。仕事ではミスの連続、髪は切りすぎちゃったし、恋人ともささいなことでケンカばかり。今日だってせっかくの休日なのに、外は今にも泣き出しそうな曇り空。天気までもがわたしにいじわるをしているみたい。
こんな日はなにもしないに限る。テレビをみながらゴロゴロして過ごすとしよう。
ゴロゴロのお供にかかせないのが、着古してやわらかくなったセーターと、座り心地が最高のソファ。そして淹れたてのコーヒー。
そうそう、外回りのついでに買ったお菓子も一緒にいただこう。本当は彼と食べるつもりで買ったのだけどね……。
小さなお菓子の名前は「SOIL」という名がついたプラリネ。プラリネとはアーモンドを使ったお菓子とか、ひと粒サイズのお菓子っていう意味があるんだって。プラリネ、プラリネ、プラリネ……。なんだか魔法の呪文みたいでかわいい。
お菓子ってなんだか不思議。どんなに嫌なことがあっても甘い味わいがトゲトゲした心を一瞬にしてやわらかくしてくれる。しあわせの記憶が呼び起こされるみたいな不思議な感覚。
コーヒーの香りと「SOIL」が思い出させてくれた大切なこと。
切りすぎたと思っていた髪も、よく見るとそんなに悪くないんじゃない? 彼にメールをしてみようかな。今なら素直に「ごめんね」が言えそう。
人生の決断を「甘い標本」に託して - 32歳F子の場合
会社を辞めてスペインに舞踏留学。まさか30歳を過ぎてこんな大きな決断をするとは……。自分の行動力、というか思い切りの良さに1番びっくりしているのはほかでもない、あたし自身。
20代のころにはじめたフラメンコ。情熱的な踊りとフラメンコギターが奏でる刹那的音色、カンテの激しくも物悲しい歌声。そんな世界に魅了され、いつしかプロのダンサーを夢見るようになっていたあたし。
なにかに不満があるわけじゃない。仕事も楽しいし、やりがいだって感じている。
ああ、また思い出しちゃった。会社を辞めると報告したときのボスの顔。驚きと怒りと、一瞬の寂しさと。大きなプロジェクトを成功させたばかりのこのタイミングは、果たして吉と出たのか否か……。
そんなときにデスクに置かれた小さな砂糖菓子。ノースポールの花を閉じ込めたその美しさに一瞬見とれてしまった。
その小さくてかわいい砂糖菓子は、お湯を注いでハーブティーとしていただくのだとか。おしゃれなボスらしいな。
仕事のブレイクタイムに飲むハーブティー。さわやかな香りとやさしい甘さはわたしの力になった。
ノースポールの花言葉は「誠実」「愛情」。
ボスからの小さいながらも力強いメッセージに違いない。
これはあたしという標本。誰よりも尊敬するボスから託された思い。
「がんばれ」背中で小さく聞こえたその声の主に誓う、夢への覚悟がそこにあった。
ティータイムが呼び覚ます、しあわせの記憶をあなたもお菓子とともに味わってみませんか?