この夏服、洗える? 洗えない?
今回のテーマは「お洗濯」。頻繁にお洗濯をするこの時期だからこそ、マスターしておきたい洗濯の知恵です。
指導してくださる洗濯アドバイザーの中村祐一さんは、長野県伊那市のクリーニング店の3代目として、メディアでの指導や洗濯関連の商品開発、そして洗濯術の伝道師として洗濯の教室を主宰し、注目されている洗濯のプロです。
洗濯の基礎を教えてもらう前に、覚えておきたいことが。「まず、洗う前にタグを見てください。タグにはこの服がどのような洗濯ができるかの情報が細かく記載されています」と中村さん。
手洗いの可・不可や、アイロンの温度、ドライクリーニングの指示、洗剤の指示など、基本的にはそのタグの表記に従って洗濯をしましょう。
今回洗うTシャツには、「手洗い」の表記がありました。中村さんは、少し生地を引っ張ってみています。
「生地が伸びるようであれば洗濯ネットに入れて洗います。今回はネットに入れなくても大丈夫そうですね」
洗濯時に生地が傷まないように、こうした配慮も必要。中村さんは本当に衣類を丁寧に、丁寧に扱います。たらいにぬるま湯を張り、おしゃれ着用の洗剤を湯の中に入れ、軽くかき混ぜて洗剤液を用意したら、ようやく洗濯本番。ゆっくりと洗剤液の中に沈め、洗剤液を衣類に浸透させます。そして、そのまま5分ほど放置。
「動かさない・こすらないが大事です。こすってしまうと、シルクやウールのセーターなどは毛羽だってしまったりすることも。動かさず、洗剤の力で汚れを浮かします」
首もとや袖などの汗や皮脂汚れなど、しつこい汚れがある場合は、洗濯前の処置が大切。ここのポイントは後編でお届けします。
その後、すみやかにすすぎへ。軽く絞って洗剤液をある程度落としてから、水ですすぎます。20回〜30回、水の中に衣類を沈める・浮かす・軽く押すを繰り返し、衣類にきれいな水を通します。水に泡が見えなくなるまで2、3回水を取り替えて繰り返せば、すすぎの完了。
脱水は、洗濯機の脱水機能におまかせするのがベター。すすいだ衣類は丸めず、広げて脱水にかけます。時間は1分。長くかけすぎると、シワがついたり、生地が傷む原因にもなるそうです。
脱水から取り出したTシャツは、まだまだしっとり。干すときには、軽く叩いてシワを伸ばしてあげます。そして、縫い目を少しだけひっぱって整えることで、衣類が縮まることも防げるのです。
洗剤の使い分け
さて、今回、Tシャツを洗うのに使用した洗剤は、おしゃれ着洗い用と言われている洗剤ですが、普通の洗剤と何が違うのでしょうか?
「洗剤を分類すると、“粉末洗剤”“液体洗剤”になります。実は液体洗剤よりも粉末洗剤の方が洗浄力は強く、しつこい汚れには粉末洗剤を、普段の生活でついた軽い汚れは液体洗剤と分けて使うのがいいです。また、粉末・液体洗剤が弱アルカリ性なのに対し、おしゃれ着洗い用の洗剤は中性洗剤。おしゃれ着用の洗剤のほうが生地に与えるダメージを抑えて優しく洗います。素材や色、汚れに応じて使い分けましょう」
ちょっとやそっとでは落ちないシミやしつこい汚れには、粉末洗剤に漂白剤の併用が有効! など、さまざまな汚れの落としワザがありますが、汚れが付着したときの初期対応も大切。シミになってしまうか落ちる汚れになるか……! その後の服の命運がかかっていると言っても過言ではないのです。例えば、白シャツに赤ワインをこぼしたら?
「まずは、水分(赤ワイン)を乾いた布で吸い取ります。そのあとに、濡れたおしぼりなどで摘み取るようにして汚れを落とします」
この時、手洗いせっけんなどで洗おうとしてしまいがちですが、これは“NG”なのだとか。応急処置としてとりあえずは汚れを拭き取り、家に帰ってからしっかり汚れを落とします。
中村さんは、濡らしたシャツにいきなり食器用洗剤を直塗り! 確かに、皿についた油ものもしっかり落とす食器用洗剤ですが、なんと、衣類の汚れにも使えるのです。
「汚れが油性のものであれば、クレンジングオイルやガスレンジ用の洗剤でも効果がありますよ」と話しながら、食器用洗剤を歯ブラシでなじませたあとすすぐ中村さん。次に10倍に薄めた酸素系の漂白剤を汚れに塗り、これも歯ブラシでなじませました。
そして、スチームアイロンで高温のスチームを噴射。温めることで漂白剤の効果が高まるそうで、ドライヤーでも良いとのことでした(ドライヤーの場合は水分が蒸発しないように必ず水で湿らせながら使ってください)。
正しい洗濯方法がわかれば、衣類のヨレや傷みも怖くないですね。古い汚れは落としづらいので、汚れが着いたらその都度洗ってあげて、しっかり汚れを落としきるのが衣類が長持ちするコツなのです。さっぱりと洗った衣類で、爽快な夏をお過ごしください。
次回は、夏の衣類・小物の洗濯方法をご紹介します。
撮影協力:センタクスタジオ
文・海老原悠 写真・山口徹花