この夏、バンダイが新たに送り出した商品が『ケンダマクロス』シリーズ。これはネーミングとその形状からおわかりの通り、日本で昔から遊ばれているけん玉をクールにアレンジしたおもちゃ。その特徴は男女や年齢を問わず、夢中になれる要素を数多く備えていること。開発にはこれまでバンダイが蓄積してきたおもちゃづくりのノウハウが随所にいかされています。
このプロジェクトを担当したひとりが、プレイトイ事業部 イノベイティブトイチームリーダーの矢内道雪さん。商品化にあたって、まずはメインターゲットである小学生にアンケートを実施したそう。
「その結果わかったことは、小学生の約9割はけん玉をやったことがあるということ。ただし、現在も継続して遊んでいる子どもたちは少ないということが分かりました」
小学生たちにけん玉で遊ぶことを止めてしまった理由を聞くと、「けん玉は難しい」からという意見が大半。多くの子どもたちは玉をカップにのせることすらできなかったのです。そして、けん玉に対して、「古い遊び」というイメージを抱いていました。ということは、それらのマイナス要素を払拭した新しいけん玉をつくれば、多くの人たちに受け入れられる可能性は高いのではないか。ここからこれまでにないけん玉づくりがスタートしました。
まずは多くの小学生が感じていた、けん玉の難しさ。
「これに関しては、従来のけん玉と同じ標準サイズのカップのほかに、それよりも直径が約1センチ大きな、つまりはより簡単に楽しめるスタビライズカップを用意。遊ぶ人のレベルに合わせて、カップを交換できるようにしました」
これによって、玉をカップにのせることが“できた!”という喜びや興奮を気軽に味わえるようになったと矢内さんは語ります。そして、スタビライズカップに慣れてきたら、標準サイズのスタンダードカップに交換することで、楽しみながら無理なくレベルアップすることができるのです。
また、古い遊びというイメージを払拭するために、素材には木ではなく、クリアなプラスチックを採用。シンプルなデザインの中に『ケンダマクロス』を表す、KDXやXのデザインをさりげなく配するなど、見た目にも徹底的にこだわっています。さらにはカップを交換することで、自分だけのケンダマクロスに仕立てることが可能に。このカスタマイズの要素は、まさにバンダイがこれまでのおもちゃづくりで学んだ、子どもたちが好きな要素のひとつ。こうしたさまざまな工夫によって、ただの遊び道具に留まらない、持っているだけでカッコイイけん玉が誕生したのです。
「プラスチック製のけん玉は使いにくいという評判もありましたが、『ケンダマクロス』に関しては、カップの形状を調整することでボールがカップにピタッと吸いつくような使用感を実現することに成功しました。また、玉と本体をつなぐ紐の位置も、従来のけん玉と同じ箇所に設定しています」
遊び方は使う人の自由ですが、ただ、カップにのせたり、スパイクと呼ばれる棒の部分に玉を挿し入れるだけではなく、トリックと呼ばれるさまざまなワザも用意されています。レベルに応じて、これらのトリックに挑戦してみると、さらに盛り上がりそう。
それぞれのトリックにつけられた名前も、「MoshiKame」、「ムーンサルト」など海外の人でもわかるようなカッコいい名前にこだわっています。
全国340店舗(2014年8月現在)の認定店では、定期的にオフィシャル認定会が行われ、そこでトリックをみごと決めることができれば、スタンプを押してもらえる仕組みになっています。13の基礎トリックをすべてクリアすると認定証が授与されるなど、遊ぶ人の向上心を引き出す仕掛けも満載です。
来春には大会も予定されている『ケンダマクロス』。国内でムーブメントを巻き起こしたら、次は海外展開も視野に入れているそうで、特訓を重ねれば、世界チャンピオンになることも夢ではありません。そして、こうした人々の夢を創造し、応援するのがバンダイというメーカーなのです。
©BANDAI 2014
文・石川博也 写真・鈴木慎平