日本を代表するおもちゃメーカーのひとつとして、子どもたちばかりでなく、時に大人たちをも夢中にさせてきたのがバンダイです。
例えば、女性なら『美少女戦士セーラームーン』シリーズのフィギュアや『たまごっち』、男性なら『仮面ライダー変身ベルト』や『機動戦士ガンダム』のプラモデル、通称"ガンプラ"などのおもちゃで遊んだ経験があるのではないでしょうか? これらはすべてバンダイが世に送り出した大ヒット商品なのです。
ほかにも『鉄腕アトム』のフィギュアや、通称"キン消し"と呼ばれる、カプセル玩具『キン肉マン』、現在も販売されている『モグラたたきゲーム』や『ドンジャラ』など、その歴史をさかのぼれば、多くの人々の記憶に残る懐かしのおもちゃが数多く名を連ねています。それもそのはずで、実はバンダイは1950年創業の老舗企業。当時の社名は「萬代屋」と言いました。
「創業時の社名は、中国の古い書物の中にある“萬代不易”からとったもので、この名前には“いつの世でも人びとの心を満たす商品をつくり、やむことのない企業の発展を願う”という気持ちを託しています」
そう語るのは、バンダイ社長室広報チームの今福ゆり子さん。以来、65年近くにわたって、“萬代不易”の言葉を創業理念として大切に守り続けてきました。
そして、現在ではこのほかに“夢・クリエイション~楽しいときを創る企業~”の企業スローガンも掲げています。今福さんによれば、バンダイは「世界中のお客様の夢を育み、感動を体験していただける商品やサービスの提供に努めている会社」なのです。
では、おもちゃメーカーが数多存在する中で、バンダイの特徴や強みはどんなところにあるのでしょうか? 今福さんに尋ねると「“キャラクターマーチャンダイジング”というビジネスモデルにあります」という答えが返ってきました。これは各々のキャラクターが持つ”世界観”や”魅力”を、最適なかたちで商品やサービスとして提供していく仕組みのことです。
「バンダイでは、他社さまから商品化権を取得したキャラクター、または自社で開発したキャラクターについて、その世界観や魅力がもっとも表現できるかたちでの商品やサービスの企画開発に努めています」と今福さん。
『機動戦士ガンダム』を例にとれば、作品に登場するモビルスーツをプラモデルとして販売するだけでなく、その世界観をいかしてオフィシャルカフェとなる『GUNDAM Café』をオープンしたのは、まさにキャラクターマーチャンダイジングの賜物です。また、これまでに全世界で8,000万個以上を売り上げている『たまごっち』のように、自社内でキャラクターを創造し、育成していくノウハウも蓄積しています。
つまり、現在バンダイが生み出しているものは、必ずしもおもちゃというわけではないんです。キャラクターの世界観を軸に、これまで培ってきたノウハウや技術を最大限いかして、おもちゃはもちろん、模型、玩具菓子、カプセルトイ、カード、アパレル、生活用品など、ほかに類をみない非常に広い事業領域で、商品やサービスを提供しているのです。
そして、その勢いは国内に留まりません。2012年4月から中期ビジョンとして掲げているのが、「真のグローバル化」。今福さんによれば、これまでバンダイが培ってきたキャラクタービジネスの強みを、世界の地域や市場の特性にかなった方法論に基づいて展開している最中とのこと。
「すでに販売しているアジア、欧米地域の強化や拡充はもちろん、今後も順次エリアを拡大していく予定です」
このような取り組みを通して、世界のキャラクタービジネス、エンターテインメントビジネスにおけるリーディングカンパニーになることを目指しています。
キャラクターマーチャンダイジングを武器に、いまや世界的な企業へと成長を続けるバンダイ。この夏には新たな商品『ケンダマクロス』シリーズを発売しました。後編では、けん玉をモチーフにした、このアクティブトイの魅力に迫ります。
文・石川博也 写真・鈴木慎平