コラム

「OEUVRE」後編|フフルルマガジン

別冊コロカル 第10回 福岡県久留米市

「OEUVRE」後編|フフルルマガジン
マガジンハウスのwebマガジン『コロカル』と連動し、全国のすてきなお店を訪れます。今回は、福岡県久留米市にある「PERSICA」と姉妹店「OEUVRE」をご紹介。後編では、国内外の生活雑貨やアクセサリーなどを扱うセレクトショップ「OEUVRE」へ。

フランスや国内の生活雑貨をセレクト

西鉄久留米駅から歩いて15分。住宅街を通り抜け、狭い路地を進んでいくと、植栽が茂るかわいらしい庭に2階建ての建物が佇んでいる。コンクリート造の小さな建物の1階に、国内外の日用品や洋服、アクセサリーなどのセレクトショップ「OEUVRE(以下ウーブル)」がある。

 

どこかヨーロッパの田舎を想起させるような外観だが、「もともとは、近くにある中央市場へ出荷する野菜の洗い場や倉庫として使われていた建物だったんですよ」とオーナーの牟田絢加さんが教えてくれた。駐車場も十分にとれ、緑も多かったこの物件に、絢加さんはひと目惚れしてしまったそう。

1階の外観。2階にはネイルショップが入っている。
1階の外観。2階にはネイルショップが入っている。

西鉄久留米駅をはさんで反対側のエリアに、2012年に旦那さまの裕一さんとオープンさせた食料品とスニーカーの店「PERSICA(以下ペルシカ)」(前編参照)とは姉妹店。もとより、ウーブルは絢加さんが結婚以前から開いていたお店で、今年で9年目。地元の専門学校を卒業後、駅前に借りた小さな店舗で、輸入雑貨などを扱うセレクトショップをオープンさせた。その後、より広いスペースを求め、この物件にたどり着いたという。

 

「今思えば、若かったから無謀にもお店なんて始められたのかなって思います(笑)。でもいろいろなものが揃う“ショップ”ってワクワクする空間ですよね」

ウーブルオーナーの絢加さん。
ウーブルオーナーの絢加さん。

店内に入ると、その広さに驚く。コンクリート打ちっぱなしの床と天井に、ブルーグレーと白く塗られた壁。そのなかを水色の透明なガラスのシェードが淡く灯り、無機質でニュートラルな空間が広がる。このランプシェードは、長野県の「スタジオ プレパ」に希望の配色をオーダーした、ウーブルオリジナルのカラーだ。

 

ウーブルの商品のほとんどは、絢加さんがセレクトしている。もともとフランスの素朴な輸入雑貨や骨董品などのセレクションからお店をスタート。店内の什器もフランスで見つけたアンティークの机だったり、久留米で見つけた昭和が香り漂うガラスショーケースだったり。

 

「長く使われていたものは味わいがあって好きですね。私の趣味は、古いものが好きだった父とフランスが好きだった母の影響がミックスしているんだと思います」

左のカトラリーと器は、鹿児島県の「ONE KILN」のもの。右手前にあるのは、福岡を拠点にオーガニックコットンや手紬の糸を使って、ガラ紡績機で織る「Suno & Morruson」のストールとウーブルオリジナルのコースターなど。
左のカトラリーと器は、鹿児島県の「ONE KILN」のもの。右手前にあるのは、福岡を拠点にオーガニックコットンや手紬の糸を使って、ガラ紡績機で織る「Suno & Morruson」のストールとウーブルオリジナルのコースターなど。

絢加さん曰く、セレクトの基準は「ここでしか出会えないもの」。アメリカのブランド、「RENNES」の革製品もそのひとつ。ジュリア・オーカンという女性デザイナーがボストンでつくっているものだ。

 

「たまたま、海外のブロガーをチェックしていたらすごくステキな革小物が紹介されていて。それで、つくり手であるジュリアにメールをしたのがきっかけです。それ以来、新作が出るとオーダーしています」

 

英語は苦手だという絢加さんの基本的なコミュニケーションはメール。

 

「気になったから連絡しただけで(笑)。メール以外に手段が思いつかなかっただけなんです」と絢加さん。なかなかの行動力をお持ちだが、本人にとってはとてもシンプルな方法のようだ。

こちらも絢加さんがコンタクトをとっているというパリの「Clemence Cabanes」のアクセサリー。革の使い方や配色がキュートで、新作が出る度にウーブルに届くのだそう。
こちらも絢加さんがコンタクトをとっているというパリの「Clemence Cabanes」のアクセサリー。革の使い方や配色がキュートで、新作が出る度にウーブルに届くのだそう。
リサーチは海外の本を参考にすることも。いまの絢加さんのお気に入りは、アメリカの『BROOKLYN MAKERS』。
リサーチは海外の本を参考にすることも。いまの絢加さんのお気に入りは、アメリカの『BROOKLYN MAKERS』。

もちろんウーブルでは、国内の商品も扱っている。地元久留米でつくられてきた伝統的な綿織物「久留米絣」。その伝統技術を生かしてオリジナルアイテムを提案する、福岡発信のブランド「gi(ギー)」の商品も。タータンチェックのような織の組み合わせのハンカチやブックカバーは、温かみのある風合いを醸し出す。使い込んでいくほどに手に馴染んでいくのだそう。

窓辺に並ぶ「gi」の商品。伝統的な模様がどこかスタイリッシュに見える。
窓辺に並ぶ「gi」の商品。伝統的な模様がどこかスタイリッシュに見える。

「海外のものだから」「東京のものだから」など、決められたカテゴリーから選ぶのではなく、つくり手の気持ちがこもり、アイデアがちりばめられたプロダクトを選んでくる絢加さん。それらはすべて、彼女の久留米での暮らしやオシャレを、少しだけ楽しむためのスパイス選びのようにもみえる。だから、絢加さんは今後についてもこう話す。

 

「これからも変わらずに、マイペースに続けていくだけかな(笑)」

 

2012年に姉妹店ペルシカがオープンした後は、食料品はほとんどペルシカへ。このウーブルも内装を変え、今年4月にリニューアルオープンしたところだ。

 

ちなみに、この内装は夫婦ふたりで考えてでき上がったそう。共鳴するセンスを持つパートナーを得て、ますますウーブルは進化していきそうな予感。

 

「産休の間行けなかったので、まずはフランスに買い付けに行きたいですね。フランスの地元の民芸品ばかりを扱う問屋さんや骨董市をまわったりします。毎回掘り出しものがあるので、楽しみですね」

ペルシカ同様、大阪の「maillot」のレディースシャツが。久留米のスニーカーメーカー「アサヒコーポレーション」のブランド「SOLS」のスニーカーはレディースサイズがメイン。
ペルシカ同様、大阪の「maillot」のレディースシャツが。久留米のスニーカーメーカー「アサヒコーポレーション」のブランド「SOLS」のスニーカーはレディースサイズがメイン。
店舗の一番奥には食器や食料品が並ぶ。京都の「LITTLE WONDERS」のオーガニックハーブティーは女性向けにブレンドされたものをセレクト。
店舗の一番奥には食器や食料品が並ぶ。京都の「LITTLE WONDERS」のオーガニックハーブティーは女性向けにブレンドされたものをセレクト。

コロカルでは、ペルシカでも扱う福岡県の「(READYMADE) PRODUCTS」のダッチオーブンがつくられる現場を訪ねました。

⇒くわしくはこちらからどうぞ:COLOCAL

 

 

文・塚原加奈子 写真・山本陽介

OEUVRE

【住所】福岡県久留米市本町1270 1F【電話】0942-33-0107【営業時間】13:00〜17:00 日曜・月曜休

http://oeuvre4.blogspot.jp/