グルメ・スイーツ

永谷園の味噌汁。あさでもよるでもなく、ひるげ

NPデパート探検隊 for men vol.1

永谷園の味噌汁。あさでもよるでもなく、ひるげ
日々、ECサイトという“巨大デパート” を探検するこの企画。まさか、通販でインスタント味噌汁を買う日が来るとは…。今日も男は逡巡してます。

インスタント味噌汁をネット通販で買う。

これって10年前だったら疑問を感じていたはずの行為だと思う。10年前の俺は、今の俺を批判するだろう。

「たかだかインスタント味噌汁を買うために宅配業者のトラックを動かすのか?それって地球温暖化とかで、よくないことなんじゃないのか?」

「いや、宅配業者のトラックはルートで毎日回ってるんだよ。わざわざ俺の味噌汁一袋のために何キロも走るわけじゃないよ。むしろ、地方に住んでる人なんかスーパーへ行くのもマイカー使うのが普通だろ。一人一人が自分のクルマのガソリン燃やして買物に行くよりか、通販を利用した方が地球にやさしいんだぜ」

「だけどさ、やっぱ何だかなあ。それくらい自分でスーパーへ行けばよくないか?どこまで不精なんだ。病人じゃないんだから自分の足で歩いて買いに行けよ。お前はSFか。サイバーか。肉体をなくした未来人か?」

「いや......だけど、そっちから見りゃ10年先の未来にいるんだよ、俺は今。だからしょうがないじゃん」

......そんな自問自答を繰り返しつつ、私はいつの間にか通販に慣れてきたのであるが、完全に慣れきっているわけでもない。いまだに何だか人として不遜なことをしている気もする。

しかし今回、インスタント味噌汁を通販で注文することに迷いはなかった。なぜなら、これは近隣のスーパーでは決して売っていない商品だからだ。と言えば、地方のメーカーが作っているレアな商品と思われるかもしれないが、そうではない。全国区のメジャーブランド永谷園の味噌汁である。

私が買ったのは永谷園「ひるげ」だった。

永谷園の味噌汁の看板商品「あさげ」のシリーズ商品として「ひるげ」「ゆうげ」があって、「あさげ」は合わせ味噌、「ひるげ」は赤味噌、「ゆうげ」は白味噌となっている。赤だしが好きな私は「ひるげ」をいつも探しているのだが、都内のスーパーではとんと見かけない。「あさげ」「ゆうげ」はあっても「ひるげ」だけはないのだ。

いや、「あさげ」が売れ筋なのは分かっている。毎日飲むなら合わせ味噌の方が飽きない。だけどたまにはコクのある赤だしを飲みたいのだ。飲みたくなったらササッと「ひるげ」。ああ、「ひるげ」があればなあ......。そう思い続けて幾年月、私はついに「ひるげ」のお取り寄せを決意したというわけだ。

ここでもうひとつ、私にはこだわりがある。注文したのは「ひるげ」の生みそタイプではなく、ドライタイプ(粉末)だ。

もう30年以上前になるのだろうか、インスタント味噌汁界に生みそタイプが登場した時は画期的な進化と受け止められ、瞬く間に市場を席巻した。しかし私は当初からインスタントの生味噌タイプには疑問を抱いていた。

生味噌が手につかないように注意しながら小袋を切り、注意しながら絞り出し、絞っても絞りきれていないような残尿感を抱きつつ、最後もゴミ袋の外側に味噌がついたりしないように注意しながら袋を捨て......という一連の行為に、私はかなりストレスを感じるのだ。

インスタントなんだから、手軽にササッと粉末を投入し、ジャッとお湯を注ぎ、グビッと飲みたい。例えば職場で弁当を食べる時など、「ポットのお湯しかない環境だが、なるべく本格的な味噌汁が飲みたい」というニーズには、インスタントの生みそタイプはベストマッチな商品だとは思う。

しかし、自宅でインスタントを食すのは楽をしたい時だ。ササッでジャッでグビッがやりたいのだ。あの生みそタイプの中途半端なストレスを我慢するくらいなら、インスタントじゃなくていいよ。自分で味噌汁作るよ。豆腐とネギ切って鍋に入れて、だし入り味噌を溶かしゃいいだけだろ。それぐらいやるよ。

やればできる子なんだよ、俺は。

......と思うのである。同じ理由で、私はカップ麺で液体スープや調味油を投入するタイプの物は好まない。

私と同じ考えの人も少なくないのだろう。一時期「あさげ」シリーズの粉末タイプはスーパーの棚から姿を消していた(製造を中止していたのかもしれない)が、数年前から復活している。

というわけで、永谷園「ひるげ」ドライタイプ(6袋入り)を購入。
すぐに届いて、ササッ、ジャッ、グビッと飲んだ。

美味い。

文・黒住 光
ライター・脚本家。雑誌『TARZAN』『SPA!』などで映画レビュー、コラムなど執筆。脚本作品にドラマ『まほろ駅前番外地』、アニメ『おでんくん』『美肌一族』『ズモモとヌペペ』など。共著に『SF宇宙映画の逆襲』『裸のシネマ』など。元・日本美女選別家協会会員。

この記事に関するキーワード