コラム

「着こなしやすい・チャレンジしやすい・取り入れやすい」 感覚を大切にした"今"を届けるブランド「HERE'S」

フフルルニュース

「着こなしやすい・チャレンジしやすい・取り入れやすい」 感覚を大切にした"今"を届けるブランド「HERE'S」
20以上のブランドを展開する老舗アパレルメーカー、イトキン株式会社のオンラインストアに、新たにオープンした「HERE’S」。そのブランドの特徴や戦略について、事業部長の酒井祐介さんとWEB担当の相良美早さんにお話を伺いました。

"今"を届ける「HERE’S」

― 「HERE'S」のブランドコンセプトを教えていただけますか?

左から、WEB担当の相良美早さんと事業部長の酒井祐介さん
左から、WEB担当の相良美早さんと事業部長の酒井祐介さん

酒井さん : 「HERE’S」は、"ライブ感"をとても大切にしているブランドです。SNSが普及した今、お客様をとりまく情報は、リアルタイムで更新されています。それにともない、時代や流行の移り変わりが、お客様の洋服にも反映されやすくなっているので、「HERE’S」でも常にショッピングのシーンで起きている"今"をお届けできるよう、臨場感のあるブランドにしようとしています。

 

— "今"を逃さないために気をつけていることはありますか?

酒井さん : ファッションのトレンドは社会情勢によっても左右されるものなので、よく売れた時のテイストに固執してしまうと、ブランドがすぐに古くなってしまいます。ブランドコンセプトの芯の部分は変えませんが、市場とのマッチングを生むためには、その時々によって洋服作りにおける優先事項を見直していく必要があると考えています。

 

— 「HERE’S」のメインターゲットはどの年代ですか?

 

酒井さん : 基本的には、F1層です。なかでも、25歳ですね。社会人になって2〜3年が経ち、ビジネスやデート、友人と遊びにいくなど、洋服を選ぶシーンの幅が出てくるのが、それくらいの年齢からという理由です。ただ、トレンドアイテムを手軽にトライしていただける価格設定にしていますので、10代の高校生や40代の方にもご購入いただいています。「HERE’S」のショップは郊外型のショッピングセンターに多く入っていますので、ベビーカーを押したオシャレなママのお客様も多いですね。

 

— 今年の秋冬はどんな"今"を提案されていますか?

酒井さん : 今期は70年代のフォークロアに注目しています。アイテムとしては、素材やカラーは秋冬仕様にシフトしていますが、春から引き続きガウチョやロングカーディガンは人気です。みなさんクローゼットにないものを買いたくなると思うので、同じロングカーディガンでも、フード付きのものだったり、コートやガウンっぽく見えるような、"何かと何かの中間"のようなアイテムが売れてきていますね。トレンドを押さえながらも、価格や商品の汎用性で手にとっていただきやすい売場作りを心がけています。

— 今期のイチオシアイテムは?

 

酒井さん : 「HERE’S」には「レディース」「メンズ」「雑貨」の3つの部門があるので、より強く感じるのかもしれませんが、最近はファッションもジェンダーレスの傾向があり、レディースとメンズの境が曖昧になってきていると思います。事務所にあるサンプルを見ると、どちらのものかわからなくなることもあるくらい。丈感の長いクロスジェンダーのアイテムは、「HERE’S」としてもイチオシですね。

お客様の利便性を追求したオンラインストアの大幅リニューアル

— 9月1日にオンラインストアをリニューアルされたそうですね。

HERE’S
HERE’S

相良さん : はい。今まで「HERE’S」独自のシステムで運用していたのですが、「MICHEL KLEIN」や「ELLE」といったイトキンが保有する他ブランドと同じサイトのなかに入りました。運営面としては、私ひとりで行っていたところを、多くのメンバーに協力してもらう形に変わりました。

 

— お客様のサービスに変化はありましたか?

 

相良さん : そうですね。やはり人的にも資金的にも、かけられるパワーが違うので、お客様のサービスはかなり充実したと思います。例えば、NP後払い(コンビニ払い)といった支払い方法が増えたり、一部ラッピングサービスに対応できるようになったり。サイト内で使用する写真の撮影にも、従来より多くの人手を割けるようになったので、より「HERE’S」の良さを出していけるようになったと思います。これまでカートも完全に独自のものだったのですが、今回のリニューアルで他のブランドとの買い周りができるようになったので、お客様の利便性も飛躍的に向上したのではないでしょうか。

 

— 商品点数も増えましたか?

 

相良さん : はい。十分な在庫を積んで、お客様が求められているときに買っていただける状態になっています。

 

— オンラインストアで「HERE’S」らしさを表現する際に、気をつけていることはありますか?

相良さん : スタイリッシュでカッコよく見せられるよう、できるだけシンプルなバナーにするように心がけています。表記も英語を使ったりですね。お買い求めやすい価格のブランドではあるのですが、だからといって安っぽく見えないように工夫しています。

消費者感覚を大切にした「HERE’S」の商品作り

— 「HERE’S」の商品は、どうやってできあがっていくのですか?

 

酒井さん : 「HERE’S」の特徴として、社内にデザイナーとパタンナーがいません。その代わり、バイヤーと呼ばれる人間を各部門においていて、そのバイヤーがサンプルを買って商品企画をしたうえで、「こんな商品を作って欲しい」と商社に依頼して作っています。あるいは、ディレクションマップという、雑誌などの切り抜きを貼って作ったカタログのようなものを提示しながら、商社と一緒に商品を作るという方法をとっています。

 

もちろんデザイナーやパタンナーが中にいる良さもあるのですが、その分、個のクリエイティビティが入ってきてしまうんですよね。「HERE’S」の場合、消費者の方に近い感覚を持った人間をバイヤーにおいて、「今、買い物に行ったら、これが欲しいよね」というライトな感覚で品揃えをした方が、ブランドコンセプトにマッチしているという考えから、このスタイルに落ち着きました。

 

— 「HERE’S」では、"お得感"も大事にされていますか?

酒井さん : そうですね。去年から今年にかけて、安いだけで売れる時代は終わったという感覚があります。例えば、「2,990円なら売れた」というのが去年なら、今年は「4,990円でも値段と比べた時に価値があると感じてもらえれば売れる」といった感じです。"商品と値段のバランスを見た時に、どれだけ驚きがあるのか"が大事。「HERE’S」では価格面に魅力を感じて支持していただいているお客様も多くいらっしゃるので、そこは大切にしながら商品設計をしています。

 

— どうして安いだけでは売れない時代に入ったと思いますか?

 

酒井さん : 見当違いかもしれませんが、2008年頃にファストファッションが一気に日本に入ってきて、価格の安さに驚いて飛びつくお客様が多かったと思うのですが、「買ったはいいけど、その服って今どうしてる?」とか、「1シーズン経ったら、その服ってどうするの?」とか、改めていろんなことに思いを馳せるタイミングだったのかなと思いますね。ファストファッションは長く大切にするようなものではありませんし、それを着ている自分を冷静に見つめなおす時期にきているのかなと。高いものは、簡単に手を出せない分、買ったことによって得られる満足感や納得感が、持続すると思いますので、お客様のマインドにそうした変化が起きているのかなという気がしています。

 

— これから「HERE’S」をどんなブランドにしていきたいですか?

 

酒井さん : ビッグメゾンのコレクションでは、デザイン的に突飛なものやファッションのエッセンスが詰まった密度の濃いものが出てきますが、「HERE’S」では「着こなしやすい・チャレンジしやすい・取り入れやすい」というお客様の感覚を大切にしています。「HERE’S」は、長い歴史を持つイトキンのなかで、2012年に3つのブランドを集めて生まれた前衛的なブランドです。古き良きイトキンを大切にしながらも、我々若い人間が中心になって試行錯誤しながら、これからも"今"を手軽に届けていけるブランドとして、進化を続けていきたいです。

ITOKIN Online Store 「HERE’S」

http://www.itokin.net/heres/

文:野本纏花
元マーケターのフリーライター。1983年、兵庫県生まれ。All About インターネットサービス ガイドのほか、様々なWebメディアでインタビュー記事などを執筆中。