くらし

暮らしに欠かせない「器」と出会う。

新スタンダード講座「アンティークの楽しみ」 vol.1

暮らしに欠かせない「器」と出会う。
“一点もの”との出会いを多く経験している「antiques tamiser」の吉田昌太郎さんから、“もの”との出会い、つきあい方を学びます。第1回は「食器・器」。

日々の生活の中で、私たちは何千何万の商品の中から、これ! というものを選ぶのですが、その選択の目を養っていくって大切。"目利き"と呼ばれる人はどのような選択をしているのでしょうか?

 

特に、"一点もの"との出会いを多く経験しているアンティーク店の店主からそのコツを学びましょう。恵比寿で「antiques tamiser」を営む吉田昌太郎さんに、吉田さん自身の思いれの強い"もの"との出会いやつきあい方について教えていただきます。

 

第1回は、暮らしに欠かせない「食器・器」との出会いについて。

 

フランスの分厚くて白い皿

吉田さんが取り出したのは、柄のないシンプルな白い皿。その中でも吉田さんの美の基準がありました。

 

「リムや皿の中央にナイフとフォークの傷跡があるでしょう。昔から人々の暮らしでできた“生活の跡”です」

 

新品のものには決して見られない、表情豊かな一枚。リムの角がきりっと立っているのも吉田さんのお気に入りで、「毎日かばんに入れて持ち歩きたい」と言わしめる逸品です。

 

「分厚く頑丈にできているのできっと宿舎とかで使われていたのではないでしょうか」と、吉田さんは200年前の日々の営みや、移り変わってきた持ち主のこと、一枚の皿が辿ってきた歴史に想いを馳せます。

 

蚤の市で手に入れたという、1800年前後のフランス製のこの傷だらけの皿は、その歴史の重みも手に感じます。

 

ベルギーの蚤の市で手に入れた土の器

次に見せていただいたのは、ぽってりとしたフォルムが愛らしい土の器3点。「白っぽいものが多いこの店のなかで、この土の器はおおらかさを感じます」と吉田さん。

 

フランスで1800年前後につくられたもので、ベルギーの蚤の市で手に入れたそう。吉田さんが器を選ぶポイントとは?

 

「“この器に料理を盛ってみたい”と感じたものが一番いいですね。デザインや産地や珍しさではなく、この器には魚を乗せてみたいなとか、意外と和食が合いそうだなとか、そう素直に感じたものを選びます」

 

アンティークだからと言ってうやうやしく飾ったり棚にしまっておくのではなく、実際に使ってその器の歴史の一部になるというのもものを所有する楽しみのひとつですね。

 

“なにを盛りたいか?”を基準に考えることは、新品のものにせよ、アンティークのものにせよ、器を選ぶときに気に留めておきたいポイント。

 

antiques tamiser オリジナルホーロー皿

吉田さんが惹かれるという「素朴な白」。

 

antiques tamiserオリジナルのリムの広いまっ白なホーロー皿は、オランダ製の古い皿を模したもので、ふくらませた風船の底を切り取るように皿状に成形し、1枚1枚手作業でつくられています。

 

その薄さはなんと0.4mmと、まさに職人技。

 

この薄さゆえに窯に入れたときにできたゆがみも1枚1枚異なり、皿の持つ個性となっています。主役であるべ物を邪魔しない、名脇役のようなお皿。

 

「白にも色があるんです」と言う吉田さんの言葉に説得力があります。

 

さて、みなさんならなにを乗せますか?

文・海老原悠 写真・ただ(ゆかい)

講師プロフィール

吉田 昌太郎さん
アンティークスタミゼオーナー/1972年東京生まれ。2001年港区元麻布にてアンティークスタミゼをオープン。2005年恵比寿に移転。2009年には栃木那須塩原市(旧 黒磯)にて、tamiser kuroisoをオープン。独自な視線で集められた様々な国の生活道具が店内に並べられている。住宅、店舗の空間デザインも手掛け、独特な世界観をまとめた著書「antiques tamiser scrap book」を出版。その他、糸の宝石(共著)がある。『antiques tamiser』 住所/東京都渋谷区恵比寿南2-9-8 落合荘苑ビル101 TEL/03-3792-1054