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ポップでかわいい「kichijitsu」が描くcoolな御朱印帳の世界

フフルルニュース

ポップでかわいい「kichijitsu」が描くcoolな御朱印帳の世界
伊勢の神宮や出雲大社の遷宮、四国八十八ヶ所霊場開創1200年など、神社仏閣に耳目が集まったここ数年。そうした背景があってか、神社仏閣でいただく「御朱印」をいただく人が急増しています。今回は新しい和のデザインが人気の御朱印帳をつくるテキスタイルプロダクトブランド「kichijitsu」のデザイナー、井上綾さんにインタビュー。創業のきっかけや製品についてお話しをお伺いしてきました。
近年、高い人気を博し休日ともなると社務所には長蛇の列ができる「御朱印」。社寺ごとに異なる手書きの文字や、多彩な印に魅せられる若い女性たちが急増しています。御朱印をいただく専用の帳面「御朱印帳」も、それまでの渋めなものから若い女性が手に取りやすいカラフルなデザインが増えてきました。
御朱印帳
御朱印帳はおもに社寺でオリジナルのものを製作しているほか、文房具店や紙専門店といった商店でも手に入れることができます。ここ数年では歌手のコンサートグッズや、和菓子店などでも御朱印帳を出すところもチラホラ。いまや御朱印は一過性のブームではなく、その人気が定着しつつあるといえるかもしれません。

そんななか、ネット通販や百貨店の催事等でとりわけ人気なのが「kichijitsu」というテキスタイルプロダクトブランドがつくる御朱印帳です。

「kichijitsu」ブランド誕生のきっかけは美大の卒業制作

これまでの御朱印帳のイメージを大きく覆す、ポップで新しい和のテイストが特長的な「kichijitsu」。今ではキャラクターや、地方のご当地もののコラボ御朱印帳のデザインも手掛けています。
御朱印帳
デザイナーの井上さんが御朱印帳のデザインを始めるきっかけとなったのは2013年、東京造形大学大学院でテキスタイルデザインを専攻していた頃に話は遡ります。授業の一環として学生のアイデアを商品に取り入れる産学商品開発企画に取り組むことになった井上さん。一年間で商品の企画と制作をし、成果物をギフトショーに出すというものでした。井上さんは山梨県富士吉田市で掛け軸の生地や、和装小物の生地を製造していた光織物と一緒に商品を考えることになりました。富士吉田市は織物の産地として古くから栄えた街でしたが、OEMの需要の現象などで店を畳んでしまう業者が増えていたといいます。

一緒に組むことになった光織物は、お雛様の衣装や掛け軸の表装裂地など作っていた織物企業でした。井上さんは当初、インテリア掛け軸で商品企画を練ったそうです。しかし、和室のある家屋が減り、掛け軸を飾る家が少なくなっている昨今を鑑み「掛け軸でいいのかな」という迷いもあったとか。また、製造の工程が複雑でコストもかかることも難点でした。

子供のころから好きだった社寺

井上さんは子供のころから神社やお寺へお参りすることが好きで、時間があると近所の神社へもお参りに行って育ったといいます。社寺で御守を頂いて帰り、普段から持ち歩いてもいました。あるときふと、自分がもっていた浅草寺の御守を見て「若い人も持つし、お正月はみんな初詣に行く習慣が根付いている。御守のデザインなら世代を限らないのではないか」とアイデアが閃きました。そうして誕生した商品第一号が「おまもりぽっけ」という御守型のポーチです。
おまもりぽっけ(fuji)
当時はまだガラケーが主流の時代で、カメラや携帯を持ち歩くためにちょうどよいサイズに作りました。これをギフトショーに出品したところ、PARCOやLoftなどで販売が決まり「kichijitsu」がスタートしたのです。

 

社長のひとことで着想した御朱印帳

幸先よく始まった井上さんの「kichijitsu」。次の商品をと思案をしていた折のこと、光織物の社長から「うちは神社の御朱印帳の生地も作れるんだよ」と教えてもらったそうです。井上さん自身もお参りの証に御朱印をいただいていましたが、神社の御朱印帳が地味で「もっとかわいいものがあればいいのにな」と思っていたといいます。まだ、今のように御朱印がブームになる前でしたが社長から御朱印帳の話を聞いて「御朱印帳なら神社やお寺に行く人はいっぱいいるから、ニーズがあるはず」と感じたのだそう。
GOSHUINノート
もともとかわいくてポップなデザインが好きだった井上さん、デザインする御朱印帳も自分が好きな世界観を表現することにしました。「毎日が吉日でありますように」という願いを込めて鶴や日の出、富士山などといっためでたづくしのモチーフで、ハレの日の雰囲気を散りばめて誕生したのが「GOSHUINノート」です。ときには浮世絵や屏風図などの宝物の美術書を参考に、デザインの着想を練ることもあるとか。

これからやってみたい御朱印帳のデザインとは

GOSHUINノート
最近では、出雲大社の参道にある御朱印帳専門店で出雲ゆかりのモチーフを組み合わせてデザインした限定の御朱印帳を出すなど、活動の範囲を広がっている井上さん。ほかにもユニークなところでは人気特撮ヒーロー、ウルトラマンの御朱印帳も手がけていて、和のモチーフと独特のミクスチャーを披露しています。
2,160円(税込)

 

GOSHUINノート

 

そんな井上さんに、今後どんなデザインを手がけたいか聞いてみました。

「kichijitsuでは一年に2回くらい唐獅子や富士山など和のオーソドックスなモチーフを中心に新しいデザインを出しています。出雲の御朱印帳もそうですが、香川の金刀比羅宮の参道で取り扱う限定の御朱印帳の制作もしました。今後はこうしたご当地のモチーフを取り入れたデザインに興味があります。たとえば上野の下町の雰囲気とパンダとか、"縁起のよいもの"と"カラフル"をデザインのルールにしているのでどんなふうにアレンジできるか考えるのが楽しいです」と語ります。
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※商品価格は記事公開時点のものです。
文:大浦春堂
寺社ライター、編集者。美味しいもの探しと社寺詣のため、全国を放浪中。著書『御朱印と御朱印帳で旅する全国の神社とお寺』(マイナビ出版)は現在4刷目。
ブログ:「しとやかならいふろぐ