くらし

蚊取り線香で昭和な気分を演出する。

NPデパート探検隊 for men vol.19

蚊取り線香で昭和な気分を演出する。
日々、ECサイトという“巨大デパート” を探検するこの企画。蚊取り線香をお香代わりに使いたくなるアイテムを発見。

多くの人が夏と聞いてイメージするものはなんだろうか? 

 

セミの鳴き声? 高校野球の金属バットの音? 線香花火の火薬のにおい? ゴム草履越しの砂浜の感触? もちろん人によってさまざまだろう。

 

ボクが実家への郷愁とともに思い出すのは、夕暮れ時にどこからともなく流れてくる蚊取り線香の匂いだ。室内に風を取り込むために開け放った縁側には、必ず蚊取り線香が置かれていた。親戚の家に行っても同様だ。例えば、親族が大勢集まり、庭でバーベキューをする時にも、その傍らでは緑色の渦巻の先から、白くて細長い煙が空に向かってゆらゆらと伸びていた。

 

東京で暮らすようになってからは、特にあの独特の香りに遭遇する機会はめっきり減ったように思う。都心の住宅街を歩いていても蚊取り線香の香りを感じることはない。だが、それは大都市だからではなく、時代のせいもあるだろう。今や蚊取り線香の代わりに、電気式の便利で安全な蚊よけアイテムが数多く登場しているからだ。さらに暑くなれば、窓を閉めて冷房を入れるため、蚊が部屋に侵入してくることもない。つまり蚊取り線香の出番がないのである。

 

だからこそ、蚊取り線香の香りには昭和を感じずにはいられない。古き良き日本を代表する香りのひとつであり、世界香り遺産でもあれば、瞬時に登録されると思う。

 

そんなことを考えていたら、蚊取り線香の香りが急にいとおしくなってきた。だからといって、今すぐ買って火をつけてみても、おそらく気分はイマイチなのではないだろうか。やはり使うなら夏だ。しかもお盆を過ぎて、夏の終わりを肌で感じ始めた頃。日中の暑さが和らぎ、ほんの少しだけ過ごしやすくなった黄昏時に、蚊がいようがいまいが、蚊取り線香をお香代わりに使ってみるのだ。

 

そんな時に試してみたいのが、モスキートコイルホルダーと呼ばれる蚊取り線香入れ。蚊取り線香を立て置きできるのが嬉しい。これなら窓際のちょっとしたスペースに置くこともできそうだし、線香がむき出しの状態ではなく、鉄の柵に囲われているので、心理的な安心感もある。

 

現代的なセンスと昭和感あふれる蚊取り線香の香りのコラボ。この夏は風物詩的な演出として蚊取り線香を楽しみたいと思う。蒸し暑い季節が今から待ち遠しい。

文・石川博也
1972年静岡県生まれ。エディター・ライター・構成作家。これまでに『TARZAN』『POPEYE』『BRUTUS』『anan』『GQ JAPAN』などの雑誌や、読売新聞のファッションコラム連載、ルノー、ダイハツをはじめとする企業オフィシャルサイトなどに企画、編集、ライターとして携わる。またラジオ番組の構成作家としても活躍中。

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