「おもたせです」はNG?
まず、知っておきたいのは「手みやげ」と「おもたせ」の違い。
「メディアで"おもたせの定番"と言って商品を紹介したり、店頭でも"おもたせにどうぞ"などと紹介されていて、"おもたせ=手みやげ"というイメージがついてしまっていますが、本来"おもたせ"とは、手みやげに対して敬意を払って使う言葉なので、いただいた側がその客へのもてなしに頂戴した品をすすめるときに"おもたせですが"と言うことはあっても、差し上げる側が"おもたせ"という言葉を使うのは間違っています」と三浦さん。
ついつい「おもたせです」と言いたくなってしまいますが、他の言葉に言い換えて渡しましょう。特に目上の方や年配の方に対して使ってしまうと失礼にあたる危険性もあるのでご注意を。
ほかにも手みやげに関して気をつけたい言葉が。
「差し上げる際に"つまらないものですが"と言葉を添える方が多いですよね。"自分なりに誠意をもって選んだ品ですが、立派なあなたの前ではつまらないものに思えます"という意味なので、目上の方に対して謙遜して使う分にはかまいませんが、"評判のものと伺ったので"とか、"季節限定のものですので"、"お口に合えばいいのですが"と、言葉を選ぶと、相手も気持ちよく受けとれ、会話も弾みますね」
何を贈る? のその前に。手みやげを贈る時にまず考えること
手みやげ選びで悩むのは、何を贈ったら喜ばれるかという選択と価格帯。何を贈ったら喜んでもらえるかを考えるのが楽しいという人もいれば、苦手に思う人もいるゆえんでしょう。
「何を贈りたいか決まっていればいいですが、決まっていない、何を贈ったらよいかわからない場合には、まず、目的と、相手の顔、相手の家族構成、その日がホームパーティーであれば参加人数を思い浮かべて選びましょう」と三浦さん。
まずは、お祝いなのか、パーティーの差し入れなのか、お詫びの品なのかという目的を明確にすること。そして、相手の好みや家族構成などに気配りができれば、手みやげの名人への第一歩です。
「例えば、ホームパーティーで5人集まる場合、手みやげで5名分買っていくことまでは考えられますが、さらに、場を提供してくださった方の同居のご家族にも贈ることも考えて、5名分に追加した数量を購入し、"ご家族の方もお召し上がりください"と言葉を添えて贈れると、気遣いのできる人という印象ですよね」
参加人数や家族構成がわからない場合には、飲み物や切り分けて食べるものなど、手間いらずで調整がきくものも手みやげ候補に入れてみてはいかがでしょうか。
価格帯に関して三浦さんは、「だいたい1000〜3000円のものが多いですね。相手が喜びそうなものであれば、1000円以下でももちろん大丈夫」
高すぎるものを贈っても、かえって相手に気を遣わせてしまうことも。ここでも相手との関係性や目的を考えて選ぶのがよいそう。大事なのは贈ったものの金額ではなく、ものに込める気持ちなのです。
一枚あると便利な"風呂敷"
風呂敷で手みやげを包む、というと古き良き日本の文化という感じもしますが、三浦さんは手みやげを持参する際には風呂敷を活用しています。
「風呂敷は包んだり縛ったりと自由自在なので、一枚あるととても便利です」
かたちを問わず包んで持ち運べて、たたんで持ち帰ればコンパクトでかさばらないのが風呂敷の良さです。上品に手みやげを渡すのであれば、風呂敷で包んで持っていくのがおすすめ。
三浦さんの風呂敷コレクションは、モダンなものから古典柄まで、色・柄・大きさもさまざま。贈り物の大きさや、服装に合わせて使い分けているそう。
「初めて買う方はモダン柄の少し大きめのサイズをひとつ持っておくといいでしょう。モダン柄なら洋服でも違和感なく使えるのが良いところです」
三浦さんに包みの基本形「平包み」を教えてもらいます。
1 主柄を奥にして風呂敷を裏返して広げ、表に出る柄の位置を意識しながら包むものを中央に置き、手前の端をかける。
2 左端をかける。
3 右端をかける。
4 奥の端をかける。
5 先端を下へ巻き込んで柄がきれいに見えるように整えて、完成。和モダンな千鳥がかわいい、三浦さんの風呂敷。
相手に渡すときには、風呂敷ごと渡すのではなく、風呂敷から品物を出して贈ります。包んだ順番と逆の順番で開きましょう。はらりと風呂敷を広げる姿がとても上品に見えるはずです。
お宅へ訪問し、客間などで渡すとき
手みやげをすぐに渡したい気持ちもわかりますが、そこはあせらずタイミングを伺って。大抵は、部屋でゆっくり挨拶をするときに手渡しします。
品物を出した袋や風呂敷は、たたんで傍らに置きます。そして、
1 品物を手前に置き、自分の目でまずは品物に粗相がないかを確認(写真)。
2 右回りに90度 → 90度回転させて、パッケージの正面を相手に向けて差し出す。
賞味期限や破損、パッケージに汚れがないかを渡す前に確認することで、万が一を減らせます。名刺交換でも応用できますので、ビジネスマナーとして身につけておくといいでしょう。
玄関先で渡すとき
すぐに冷蔵・冷凍してほしいもの、また水が滴る可能性がある花束などの生花を持ってきている場合や、時間の制約などで部屋にあがらないことがわかっている時は、玄関先でお渡しするのがベター。「アイスなので、早めにお渡しいたします」とひと言添えるとスマートですね。
その時にも、袋や風呂敷から出して渡すのが一般的です。出した袋は、下手(下足箱のある方向)に置き、両手で品物をお渡しします。袋は理由がない限り持ち帰りましょう。
あくまでも、相手との関係性やTPOに応じて変わる手みやげの作法。難しく捉えず、手みやげを通じてお互い気持ちよく挨拶を交わせればいいですね。
次回からは、三浦さんの手みやげセレクションが登場。手みやげに迷ったときのバイブルになりそうです。どんな品物が出てくるかどうぞお楽しみに!
文・海老原悠 写真・長谷川祐也