グルメ・スイーツ

お魚レシピその2 イワシのタルタル

新スタンダード講座「きょうは魚を食べよう」 vol.3

お魚レシピその2 イワシのタルタル
料理研究家の宮内祥子さんが魚をもっと美味しく楽しく食べるコツを伝授。第3回は、身近な魚の代表・イワシのレシピ。

私たちの生活のなかで一番なじみがある魚と言えばイワシやアジではないでしょうか。値段も安価で年中手に入る上に栄養面でも申し分なし。とても"優秀"なお魚ですが、ひとつ欠点が。それは「鰯」という漢字に表されるように、とにかく足が早いこと......。

 

買ってきたらすぐに調理することが理想です。まさに時間との一本勝負!そのため新鮮なイワシを食べるのが何よりも贅沢な気がしてしまうのです。今回も料理研究家の宮内さんに、その日の朝築地から仕入れてきたピチピチのイワシを料理していただきます。

イワシのタルタル <2枚おろしはスプーンにおまかせ!>

材料(2人分)

・ いわし……2尾(中羽位)

・紫玉ねぎ……大さじ3(みじん切り)

・パルミジャーノレッジャーノ……小さじ2

・塩・黒胡椒……適量

・オリーブオイル……大さじ1

・レモン汁……小さじ2

・わけぎ……小さじ2(小口切り)

・ケッパー…… 小さじ1

・ハーブソルト……小さじ1(市販のもので魚用)

・ミニトマト……1個

・マヨネーズ……小さじ2

・バジル(飾り用)……2枚

・アボカド……1/2個

・レモン汁……適量

作り方

1 紫玉ねぎをみじん切りにする。


2 イワシを手開きかスプーンでさばいて骨と頭を取り外し、皮をむく。

※時間があれば、イワシを3枚にさばいたあと、軽く塩をあて10分ほどおいて、水分を抜いてから刻むとさらに臭みが消え、より美味しくなります。


3 2のイワシを細切り、その後、粗く刻む。

4 イワシが細かくなったら、紫玉ねぎのみじん切り、パルミジャーノ、レモン汁、ケッパー、わけぎを乗せ、細かくたたいて切る。上に塩、黒こしょう、オリーブオイルを加え、軽く練り混む。さらに包丁でたたく。ときどき全体を混ぜるようにしながら、滑らかになるまでしっかりと練りたたく。


5 グラスにアボカドにレモン汁をかけて刻んだものを入れ、その上から3のイワシのタルタルを乗せる。マヨネーズ、ミニトマト、バジルとパルミジャーノを削ったものを添えてできあがり。こんがりトーストと一緒に召しあがれ。

 

千葉の郷土料理「イワシのなめろう」が洋風に。その名も「イワシのタルタル」。タルタルなので、パンやクラッカーにのせて食べるとなお良し。ワインがすすむ美味しさです。おつまみにも、一品料理にもなるこのタルタル、なんと15分以内でできちゃうんです。

 

簡単に作れる理由は、この料理の大胆な調理法にあります。「キレイに3枚おろしができなくても大丈夫!」と宮内さん。そんな宮内さんが使う道具はなんとスプーン1本!

 

イワシのエラにスプーンを差し入れて中骨に沿ってそのまま尾までぐっと引いてあっと言う間に2枚におろせました。コツはスプーンを短く持ってためらいなく一気に捌くこと。時間がかかって手の熱が魚に伝わると、イワシはくったりとしてしまいます。固いところは無理せずキッチンばさみも併用すると上手にできるそう。

スムーズにスプーンでイワシをおろしていく宮内さん。
スムーズにスプーンでイワシをおろしていく宮内さん。

うまく2枚におろせたら、スプーンのくぼみを利用して皮や骨から身をこそぎ落とします。確かにあまり見た目はキレイではないですが、「どうせ、身は叩いちゃうんだから!」と、宮内さんはザクザクと捌いていきます。この気楽さ、手軽さが魚をより美味しく食べるコツなんです。

 

キレイに3枚下ろしができないことがネックになって魚を料理したくないと思うのであれば、ぜひこの方法を試してみてくださいね。

築地からその日の朝に仕入れてきたイワシは鮮度が高いのでウロコがついていました。大阪で獲れたというイワシは、脂がしっかりと乗っていて甘みを強く感じました。
築地からその日の朝に仕入れてきたイワシは鮮度が高いのでウロコがついていました。大阪で獲れたというイワシは、脂がしっかりと乗っていて甘みを強く感じました。
美味しいイワシの見分け方は「ずんぐりむっくりしているもの」と宮内さん。背中が厚く盛り上がっており、肛門が開いていないのが新鮮で美味しい証拠。
美味しいイワシの見分け方は「ずんぐりむっくりしているもの」と宮内さん。背中が厚く盛り上がっており、肛門が開いていないのが新鮮で美味しい証拠。

普段使いのまな板の他に、「魚用」に薄いまな板を用意するのも宮内さんのマネしたい調理術。薄くて軽いまな板は切ったらそのまま鍋へ食材を入れることもできるので、重宝するそう。野菜などを切る普段使いのまな板が魚臭くならないのもいいですね。衛生的にもまな板を分けて使用するのは効果が高そうです。

小骨も包丁で砕いていきます。カルシウムも豊富なイワシの栄養を、余すところなくいただきます。
小骨も包丁で砕いていきます。カルシウムも豊富なイワシの栄養を、余すところなくいただきます。

このまな板でリズミカルにイワシを叩きながら調味していきます。パルミジャーノは削りたてをたっぷりと。わけぎでほんの少し和のテイストを加えるのもポイントです。

 

小さなガラスのカップに、アボカドの角切り、タルタルの順で盛りつけ、マヨネーズ、ミニトマト、パルミジャーノのスライス、バジルで彩り良くトッピングしたらできあがり。よく混ぜてからいただくと、アボカドのまったりとしたコクと、イワシの脂、マヨネーズが混ざり合いなんとも美味。みじん切りにした玉ねぎが食感のアクセントになっていて、サラダ感覚で食べられるのもいいですね。

盛りつけは彩り良く。パルミジャーノをピーラーで薄く削ぎ取り、飾り付けます。
盛りつけは彩り良く。パルミジャーノをピーラーで薄く削ぎ取り、飾り付けます。

新鮮なイワシを手に入れたら刺身もいいですが、こうしてひと工夫することで、ランクアップした美味しさになります。

 

「イワシはフレンチやイタリアンでもよく使われる魚なので、魚=和食という概念を捨てればレパートリーも増えますよ」と宮内さん。

 

イワシのほかにも同じくお馴染みの魚“アジ”でも代用できるので、ぜひお試しあれ。次回クリスマスにぴったりの鯛料理です。お楽しみに!

 

文・海老原悠 写真・ただ(ゆかい)

講師プロフィール

宮内祥子さん
jasmin’s kitchen&魚食倶楽部代表。大学卒業後、フランスに留学。パリ・リッツ・エスコフィエ料理学校、ラ・ヴァレンヌ料理学校にてフランス料理、菓子、チーズ、テーブルセッティング、ワイン、パン、フラワーアレンジメント等、食全般を学び、グランデュプロマを取得。その後、イタリア・ウルビーノに料理留学。2010 年より魚食普及活動のため水産庁・上田勝彦氏と共同で魚食倶楽部を創設。一魚種を徹底的に使い尽くす魚の料理教室を企画。年間365種類以上の魚を料理している。