私たちの生活のなかで一番なじみがある魚と言えばイワシやアジではないでしょうか。値段も安価で年中手に入る上に栄養面でも申し分なし。とても"優秀"なお魚ですが、ひとつ欠点が。それは「鰯」という漢字に表されるように、とにかく足が早いこと......。
買ってきたらすぐに調理することが理想です。まさに時間との一本勝負!そのため新鮮なイワシを食べるのが何よりも贅沢な気がしてしまうのです。今回も料理研究家の宮内さんに、その日の朝築地から仕入れてきたピチピチのイワシを料理していただきます。
イワシのタルタル <2枚おろしはスプーンにおまかせ!>
千葉の郷土料理「イワシのなめろう」が洋風に。その名も「イワシのタルタル」。タルタルなので、パンやクラッカーにのせて食べるとなお良し。ワインがすすむ美味しさです。おつまみにも、一品料理にもなるこのタルタル、なんと15分以内でできちゃうんです。
簡単に作れる理由は、この料理の大胆な調理法にあります。「キレイに3枚おろしができなくても大丈夫!」と宮内さん。そんな宮内さんが使う道具はなんとスプーン1本!
イワシのエラにスプーンを差し入れて中骨に沿ってそのまま尾までぐっと引いてあっと言う間に2枚におろせました。コツはスプーンを短く持ってためらいなく一気に捌くこと。時間がかかって手の熱が魚に伝わると、イワシはくったりとしてしまいます。固いところは無理せずキッチンばさみも併用すると上手にできるそう。
うまく2枚におろせたら、スプーンのくぼみを利用して皮や骨から身をこそぎ落とします。確かにあまり見た目はキレイではないですが、「どうせ、身は叩いちゃうんだから!」と、宮内さんはザクザクと捌いていきます。この気楽さ、手軽さが魚をより美味しく食べるコツなんです。
キレイに3枚下ろしができないことがネックになって魚を料理したくないと思うのであれば、ぜひこの方法を試してみてくださいね。
普段使いのまな板の他に、「魚用」に薄いまな板を用意するのも宮内さんのマネしたい調理術。薄くて軽いまな板は切ったらそのまま鍋へ食材を入れることもできるので、重宝するそう。野菜などを切る普段使いのまな板が魚臭くならないのもいいですね。衛生的にもまな板を分けて使用するのは効果が高そうです。
このまな板でリズミカルにイワシを叩きながら調味していきます。パルミジャーノは削りたてをたっぷりと。わけぎでほんの少し和のテイストを加えるのもポイントです。
小さなガラスのカップに、アボカドの角切り、タルタルの順で盛りつけ、マヨネーズ、ミニトマト、パルミジャーノのスライス、バジルで彩り良くトッピングしたらできあがり。よく混ぜてからいただくと、アボカドのまったりとしたコクと、イワシの脂、マヨネーズが混ざり合いなんとも美味。みじん切りにした玉ねぎが食感のアクセントになっていて、サラダ感覚で食べられるのもいいですね。
新鮮なイワシを手に入れたら刺身もいいですが、こうしてひと工夫することで、ランクアップした美味しさになります。
「イワシはフレンチやイタリアンでもよく使われる魚なので、魚=和食という概念を捨てればレパートリーも増えますよ」と宮内さん。
イワシのほかにも同じくお馴染みの魚“アジ”でも代用できるので、ぜひお試しあれ。次回クリスマスにぴったりの鯛料理です。お楽しみに!
文・海老原悠 写真・ただ(ゆかい)