毎日の暮らしがより快適に、豊かになるように―。料理や洗濯、掃除といった日々のくらしごとをみると、モノづくりの原点がみえてきます。
たとえば掃除。畳の凹凸にたまったホコリを効率よく掃き出すため、先人たちは「箒(ほうき)」を考案します。ホコリが巻き上がらない工夫や使い勝手のよい柄にくわえ、遊び心あふれるデザインなどが生まれました。
ほかにも、職人の手によって作られる風呂敷やふきん、手ぬぐいや和食器などの道具たちは今もなお、愛され続けています。電化製品があふれる昨今、それでも道具たちに魅せられるその理由とは―。わたしたち日本人は、知らず知らずのうちに利便性だけでなく、商品に込められた思想やストーリーを求めているのかもしれません。その思いこそが「モノづくり日本」の姿なのではないでしょうか。
人の手でしか作れない大切なもの
奈良の地に、創業300年を迎える老舗「中川政七商店」という会社があります。1716年(享保元年)以来、手績み手織りの麻織物中心に商売を行ってきました。かつて、奈良県では「奈良晒(ならざらし)」と呼ばれる良質な麻織物の生産が盛んでした。その歴史は鎌倉時代にまでさかのぼり、当時は僧侶の袈裟や法衣に用いられていました。やがて、茶道の茶巾や武士の裃(かみしも)などに発展した奈良晒は、徳川幕府の御用達品として認められたことで名声を高めていきます。
現在も、当時の奈良晒の製法を守りながら生地を作る同社。1疋(約24m)の生地を織るには熟練の織り子さんで10日もかかるとか。手織りならではのやわらかな手触りとぬくもり、吸収力の良さは、機械では作れない、人間の手でしか作れない大切なものがあることを信じている職人の魂が感じられますね。
奈良の老舗「中川政七商店」が手掛ける300周年の「くらしごと」
また、300年という節目を記念して「三百周年記念商品」も発表。1925年のパリ万博に出展された「麻のハンカチーフ」のデザインを復刻してプリントしたハンカチや、バッグブランド「carnet」とのコラボレーショントートバッグ、日本の工芸産地を舞台に、工芸や歴史、魅力などをふんだんに盛り込んだ「日本工芸版モノポリー」などラインナップは多岐にわたります。
⇒詳しくはこちら:中川政七商店 公式オンラインショップ