おでかけ

達人からお花見の極意を教わる

お花見達人への道 vol.1

達人からお花見の極意を教わる
日本人が大好きなお花見の季節がやってきます。2014年、東京では3月25日前後に開花し、4月2日前後には満開になると予想が出ています。まれに見る早咲きだった2013年よりは開花が遅くなるものの、ほぼ例年通りか少し早めとのことです。 今年のお花見、「幹事よろしく!」なんて言われてしまって、億劫だな…… と感じてしまっている人こそ必見な、お花見の達人・宮村ヤスヲさんから教わるお花見の極意です。

宮村ヤスヲさんは、グラフィックデザイナーとして仕事をしつつ、10年以上にわたって100人規模が集まるお花見を取り仕切る、まさにお花見マスター。

 

「春めいた季節に気持ちの良い屋外での宴会となれば当然、気分はよくなりますので、普段の飲み会よりもオープンな雰囲気がより一層高まります。このチャンスを活かして、タテの関係、ヨコの関係を充実させましょう」

 

席の移動が気軽にできるのも屋外の良いところ。コミュニケーションの場としてもお花見はとても有効なのですね。

 

しかも、参加が大人数になればなるほど、取り仕切る人の手腕が問われます。気の利いた立ち振る舞いや、積極的に場を盛り上げようとする行動によって、幹事の印象もアップすることでしょう。

 

参加者の気分が気持ちよくあがり、自身の評価もあがるお花見のHow Toを宮村さんから教わり、幹事の心構えと準備、当日の楽しみ方を学びます。

デキる幹事は、“場所選び”から勝負

みんなが楽しめるお花見は、場所選びから始まっています。特に大人数でのお花見の際は、入念な下見がマストでしょう。

 

では、どのような場所を選んだらよいのでしょうか?

 

「規模が大きくなるのであれば、まったく未知の地ではなく幹事さんに馴染みのある場所をチョイスするべき。下見も入念に」と宮村さん。基本は最寄り駅からのアクセスの良さ、買い出し店、トイレからの距離が近い場所などを条件にピックアップします。

 

提灯や街灯などの付近だと、夜間まで長時間お花見を楽しめますね。最後に片付けるときのために、ゴミ収集所がほどよく近くにあればなお良し。さらに、当日混み合うことが予想されるなら、開催場所にわかりやすい目印があるかをチェックしておくと良いでしょう。

 

でも、こうした条件の良い場所は競争率が高いのも事実。本気で狙おうと思ったら、前日夜からの場所取りもあり得ます。

 

「夜桜や日の出とともに拝める桜は場所取り班だけに許された喜びなので、お酒やおつまみを用意して至福の時間をのんびりと楽しみましょう」と宮村さん。

 

前日からの場所取りは禁止されているところもあるので、その場所のルールに従うのが鉄則ですが、もしも、前日からの場所取りが可能であれば、体調には十分気をつけて、“前夜祭”を楽しんでみては。

 

ちなみに、宮村さんおすすめの都内のお花見スポットは、井の頭公園と目黒川。水面に映る枝垂れた桜が美しく、宴会をしながらも視界に桜が入ってきやすいというのがポイントだとか。やはり“お花見”なので、便利さと共に「きちんと花を感じられる」ということも重要になります。

宮村さんたちが決めた場所は、公園の広場の小高い丘。高さがあるので開催場所として目立って探しやすく、桜の木と水場から近く、土地が平らと好条件です。
宮村さんたちが決めた場所は、公園の広場の小高い丘。高さがあるので開催場所として目立って探しやすく、桜の木と水場から近く、土地が平らと好条件です。

持ち物の確認。これを持っていくとお花見はぐっと便利に

参加者の印象に残る、楽しいお花見になるように、持ち物の準備は入念に。何か忘れて後悔してしまうこともあるかと思いますが、そんなときにコンビニやスーパーが近くにあると、さっと買い出しに行けて便利ですね。

 

持ち物の中で、特に効果を発揮するのが段ボール。シートの下に敷くだけで、底冷えが防げ、クッション代わりとなってお尻が痛くなりづらい。組み立てればテーブル代わりにもなる、と何通りにも使えるお役立ちアイテムです。

 

ただ、持ち運びに少々難があるので、同じく地面からの冷気をある程度防いでくれそうな、「気泡緩衝材(プチプチ・エアパッキン)を今年は導入してみようかな」と宮村さん。お花見に備えて捨てずにとっておくと便利です。

シートの下に段ボールを仕込む宮村さん。春の引っ越しシーズンに大量に出る段ボールもこのような便利グッズに。
シートの下に段ボールを仕込む宮村さん。春の引っ越しシーズンに大量に出る段ボールもこのような便利グッズに。
コンクリートやアスファルトにシートを張る時には、布テープや養生テープでシートを固定。テープは、場所取りの時に日付や名前を貼るときにも便利。
コンクリートやアスファルトにシートを張る時には、布テープや養生テープでシートを固定。テープは、場所取りの時に日付や名前を貼るときにも便利。

その他にも、持ってきたほうがいいものは、ワインオープナーと栓抜き。又貸しなどで無くしやすいものなので、安いものを複数個持っていくといいそうです。

 

ワインのグラスも、ソフトドリンクと一緒のプラスチックのコップではなく、プラスチックのワイングラスを使用すると、外飲み気分もあがりますね。

ワインオープナーは複数個用意。コップはプラスチックのワイングラス。ちょっと奮発して良いワインを買ったとしても、これで野外でもおいしくワインを飲めます。
ワインオープナーは複数個用意。コップはプラスチックのワイングラス。ちょっと奮発して良いワインを買ったとしても、これで野外でもおいしくワインを飲めます。

そして、必ず持っていくべきなのがゴミ袋。立つ鳥跡を濁さず。自然への敬意を払って、出したゴミはすべて回収しましょう。お花見会場にゴミ捨て場があればしっかり分別して捨て、ゴミ捨て場がない場合は分担して残さず持ち帰るのが、大人のお花見マナーです。

〈持ち物リスト〉

マストアイテム
  1. 敷物(ビニールシート。地面が土の場合、ビニールシートを挿して止める杭も)
  2. 段ボール(気泡緩衝材でも良い)
  3. 防寒着
  4. 防寒具(カイロ、ひざかけ、毛布など)
  5. カトラリー(カップや紙皿、割り箸やフォークなど、料理を取り分けるもの。人数分以上の数を用意)
  6. ワインオープナーと栓抜き(又貸しなどで無くす可能性があるので、安いのを複数個用意)
  7. 料理
  8. お酒
  9. ソフトドリンク
  10. ゴミ袋(自治体の指定があれば、指定のゴミ袋をコンビニなどで入手)
  11. 布テープや養生テープ(地面がアスファルトの場合に必須。ガムテープだとアスファルトに貼り付いて取れなくなるのでNG)

 

あると便利
  1. 何度でも使える充電式のカイロ
  2. ルームソックスなど、厚手の靴下
  3. 温かい食べ物や飲み物(保温ジャーや保温ボトルに入れて持っていく)
  4. ランタン(夜桜を楽しむなら)
  5. 持ち運びできるテーブル
  6. 折りたたみのイスや座布団
  7. USB式の太陽光電池

1に防寒、2に防寒。寒さは絶対やってくる!

「この季節、昼間はポカポカと暖かくても日が暮れてくるとまだまだ寒いです。寒さに耐え忍びながらだと気分も冷え込んでくるので、存分に愉しむためにも念には念を入れた防寒対策が必須です」と宮村さん。

 

春の陽気に浮かれて、薄着ファッションで出向いたものの、寒くてお花見どころではなくなってしまったという経験をした人も多いのでは。

 

普段の装いに加えて、ヒートテックなどのインナー、厚めの靴下、膝掛け、カイロ(貼るタイプや足裏タイプなど)を駆使して万全の用意を。また、温かいスープやお茶、熱燗、ホットワインなどを用意すると、参加者の心も体も温かに。火気厳禁の場所も多いので、保温性の高いジャーやポットに入れていくと、大変喜ばれることでしょう。

寒さは足元から。オススメは靴下の2重履き!
寒さは足元から。オススメは靴下の2重履き!
厚手の毛布でしっかり防寒。日中は陽射しが暖かでも、夕方になると急に冷え込みます。
厚手の毛布でしっかり防寒。日中は陽射しが暖かでも、夕方になると急に冷え込みます。

始まってしまえば、幹事は気配り酒配りでバタバタと動くことになりますが、苦情やトラブルがあった場合には率先して解決にあたり、途中で雨が降ってきたり、あまりにも寒すぎて思っていたよりも早めにお開きになった場合などにも、その移動先をある程度考慮に入れておくなどして、場が冷え切ってしまわないよう、スムーズに誘導できるスキルも必要とされます。

 

このように、やらなければならないことは無限にあるので、キャパシティオーバーする前に場所取り班、料理(買い出し)班など役割分担を明確にして協力を仰ぐのも大事な幹事の仕事です。みんなで協力して、楽しいお花見の宴会にしたいですね。

宮村さんが過去に開催したお花見の様子。中央の赤いマフラーが宮村さん。まさに大宴会! 今年の開催を楽しみにしている人も多いそう。
宮村さんが過去に開催したお花見の様子。中央の赤いマフラーが宮村さん。まさに大宴会! 今年の開催を楽しみにしている人も多いそう。

次回は、「snowpeak」のアウトドアグッズで快適お花見How Toをご紹介します!

 

【今回のポイント】
  1. みんなが楽しめるお花見は、場所選びから始まっている! 下見は入念に。
  2. 寒さ対策は徹底的に。段ボールや気泡緩衝材で底冷え対策も効果的。
  3. 参加者に仕事や持ち物の担当を振り分けるのも幹事の仕事。みんなで協力し合って、楽しいお花見を!

 

文・海老原悠 写真・川瀬一絵(ゆかい)

協力・池ノ谷侑花、山根諒子(やっかい)

講師プロフィール

宮村ヤスヲ さん
1973年熊本県生まれ。東京造形大学デザイン学科Ⅰ類卒。デザイン事務所勤務のち2003年より独立。学生の頃に井の頭公園で始めたお花見の雰囲気に惹かれ、会社員時代、またその後も幹事的な役割を担っていたところ、ある取材をきっかけに、いつしか花見の達人を呼ばれることに。