くらし

いつものスタイルに、アンティークのバッグを添えて。

新スタンダード講座「アンティークの楽しみ」 vol.3

いつものスタイルに、アンティークのバッグを添えて。
“一点もの”との出会いを多く経験している「antiques tamiser」の吉田昌太郎さんから、“もの”との出会い、つきあい方を学びます。第3回は「布もの」。

アンティークの"布もの"と言うと、古着か、タペストリーか、はたまたテーブルクロスか......? しかし私たちの予想に反して吉田さんが選んだのは、アンティークのトートバッグでした。

 

「新しい洋服に袖を通した時でも、こうしたアンティークのバッグを取り入れると安心する」と話す吉田さん。シンプルな服装が好きだと言う吉田さんの雰囲気によく合う、白いトートバッグふたつを紹介してくれました。

新聞配達員のバッグ

白く、持ち手の長いトートバッグは、まず「SATURDAY EVENING POST Lady’s Homemade JOURNAL」と全体に大きく書かれた文字に目が奪われます。

 

「これは、アメリカの新聞配達員が使っていたバッグなんです」と吉田さん。古着屋で手に入れたこのバッグは1940年から1950年代に実際に使用されていたものだそう。アメリカ国内の情勢が安定し、高度成長を遂げていた1940年、1950年代。そんなアメリカの古き良き時代を、タイポグラフィの美しさに見出す吉田さん。この文字も“柄”として楽しんでいます。

 

当時は広告にすぎなかったバッグですが、新聞配達員の労働によって、そして吉田さんが使用することによって出てきた汚れや色、風合いはこのバッグに味わい深さをもたらしています。

石炭運搬のためのバッグ

次に見せていただいたのは、やはり古着屋で手に入れた、大きく、分厚く、見るからに頑丈そうなトートバッグ。1930年から1940年代にアメリカで石炭を運ぶ際に使われていたそう。その用途にも驚きですが、多少汚れや破れがあるとはいえ、重く真っ黒な石炭を運んでいたとは思えないほどの美品。アンティーク品を大事に扱う吉田さんの、ものへの愛着を感じます。

 

よくみると、リベット(鋲)がマチに打たれていたり、何かを隠そうとしてつけたと思われる赤い染料が付いていたり、擦れた跡やほつれた跡も。そんな仕様や傷も含めて「ディテールの美しさに惚れ込んだ」吉田さん。70年、80年と時を経てきた自然のわざとらしくない風合いがお気に入りなのだと話してくれました。なるほど、いいコクが出ているバッグです。

バッグを買うときに、みなさんはどのような選び方をしますか?新品のものでもアンティークのものを買い求めるときでも、バッグはその人の体と生き方に寄り添う“伴侶”のようなものですから、少し見方や基準を見直して、みなさんだけの逸品を見つけてみてください。

 

最終回の品は、「文房具」。アンティークのノートが登場です。

 

 

文・海老原悠 写真・ただ(ゆかい)

講師プロフィール

吉田 昌太郎さん
アンティークスタミゼオーナー/1972年東京生まれ。2001年港区元麻布にてアンティークスタミゼをオープン。2005年恵比寿に移転。2009年には栃木那須塩原市(旧 黒磯)にて、tamiser kuroisoをオープン。独自な視線で集められた様々な国の生活道具が店内に並べられている。住宅、店舗の空間デザインも手掛け、独特な世界観をまとめた著書「antiques tamiser scrap book」を出版。その他、糸の宝石(共著)がある。『antiques tamiser』 住所/東京都渋谷区恵比寿南2-9-8 落合荘苑ビル101 TEL/03-3792-1054