東北の工芸品も集めたミュージアムショップ
宮城県仙台市の中心地、けやき通りに面して建てられている、「せんだいメディアテーク」(以下メディアテーク)は、ライブラリーやギャラリー、スタジオなどが入る7階建ての公共施設だ。
ガラス張りの館内には、四方から光が入り明るい雰囲気に包まれている。東日本大震災で被災したが、10か月後に全館再開。その際、館内に「カネイリミュージアムショップ6」もオープンした。青森県八戸市を拠点とする、文具や書籍の卸売業を担う「金入」が、もともとメディアテーク1階にあった「ナディッフ・ビス」閉店に伴う出店者募集に応募したのだ。
「仙台は、東北の中核を担う都市。たくさんの人々の往来もある。このまちでもともと東北にあった文化はもちろん、東北のクリエイターたちが集まって何か新しいことを発信していけるようなショップがあったらいいなと思ったんです」と代表取締役社長・金入健雄さんは話す。
実は、金入がミュージアムショップを手がけたのは、これで2店舗目。2011年2月に「八戸ポータルミュージアム『はっち』」内に、青森の伝統工芸品やデザイン・アート書籍などを取り扱う「カネイリミュージアムショップ」をオープンしている。
「僕はもともと、デザインやクラフトというものに詳しかったわけでないんですね。八戸でミュージアムショップをオープンするというときに、初めて考えました。八戸で店を開くからには、東京にはできない八戸らしさを考えたい。だったらおみやげにもなるんだけど、地元の人にも使ってもらえるようなものがいい。
そこで、八戸や弘前を中心に青森の工芸品を、最新のデザインやアートの本と一緒に販売することを考えました。工芸品って、地元で何百年もつくり続けられているものなのに、地元の人がそれを見たり、買えたりするショップって実はあまり無いんですよね」
それは、観光客には地元の紹介になり、地元の人には、自分たちのまちの文化を新しい視点で捉え直すきっかけとなる。
「しかも、青森は、もともと津軽藩と南部藩にわかれていたから、文化も異なるんです。それぞれの文化を一緒に発信することは面白いなと思いました」
そんな八戸での経験を生かしてオープンしたのが、メディアテークのミュージアムショップだ。さまざまな展覧会やイベントが開催されるメディアテークには、建築やアートに感度が高いお客さんがたくさん訪れる。
店内には、写真集や建築関連の本が置かれたブックコーナー、デザイナーやアーティストが手がけた文房具やアクセサリー、国内外の目利き文房具、そして東北の工芸品と4つのコーナーにわかれる。スタッフと相談しながら、ひとつひとつ吟味してセレクトしている。
「やはり、アートや建築の本は、結構売れますね。ミュージアムショップですから、それを求めているお客さんは多いんだと思います。特に伊東豊雄氏の設計であるメディアテークには、建築を学んでいる学生さんたちもよく来るので意識したりしています。
でも、単に東京で売られているものをそのまま置いたり、デザインがいいとか悪いだけで判断したりするのではなく、仙台や東北に住んでいる自分たちらしさ、地域らしさというものも、今の感覚で、出していきたいと思っているんです」
そんな金入さんの思いは、ブックコーナーにも表れている。絵本やデザイン書がならぶ一方で、一面、東北に関する写真集や書籍を集めたコーナーが。改めてみると、東日本大震災が起こる前から東北という地域を題材に写真を撮る写真家、文章を書いている思想家やアーティストが多いことに気づく。
その他にも東北地方発祥のこけしに関する本や、伊坂幸太郎氏などの東北出身の作家の小説もある。さらには、東北の若いクリエイターたちがつくる、「フリーペーパー」や地元の出版社「荒蝦夷社」が発行する東北に関する専門性の高い書籍もいくつかあり、まさに、東北カルチャーがギュッと詰め込まれた本棚は眺めているだけでも面白い。
そして、注目したいのは、やはり東北のクラフトが集められているコーナー。
八戸のミュージアムショップでは、青森のものが中心だが、ここ仙台では、宮城県のものを中心に東北各県のクリエイターや職人を一軒一軒訪ねて、探してきたものがセレクトされている。その商品については、後編で詳しく。
カネイリミュージアムショップ6
【住所】宮城県青葉区春日町2-1 せんだいメディアテーク1F【電話】022-714-3033【営業時間】10:00~20:00 第4木曜休