地元の作家のいいものを。
神戸から北へ、車で約1時間。美しい風景が広がる丹波篠山の中心部には、篠山城の城下町として栄えた情緒ある古いまち並みが残る。商家群、武家屋敷も多く建ち並ぶこのまちの一角に「プラグ」はある。
「この家は築100年くらい。もっと古い家も多く残っていますよ」
と出迎えてくれたのは、プラグの店主、吉成佳泰さん。間口も広いが鰻の寝床のように奥行きがあり、土間の部分が店になっていて、奥は大家さんの住居になっている。以前は自転車屋だったというこのスペースにプラグが移転してきたのは約2年前。その2年前に篠山の別の場所でプラグはスタートした。
扱っているのは、地元篠山の作家たちの手によるものが中心。この辺りは日本六古窯のひとつとされる丹波焼や、もう少し北に行くと丹波布、お隣の京都府綾部には黒谷和紙など、古くからものづくりが根づいている土地。丹波焼の里と言われる立杭(たちくい)にもほど近く、そこには60もの窯があるという。
ただプラグでは、丹波の窯元のものを広く扱っているわけではない。焼き物は、平山元康さんと前野直史さんというふたりの作家中心の品揃え。ふたりとも立杭の窯で修業し、丹波の土と釉薬を使って登り窯や薪窯で焼いている。平山さんは、柳宗悦や濱田庄司、バーナード・リーチといった民藝運動の旗手と縁のある丹窓窯の出身。前野さんは生田和孝の流れを汲む俊彦窯の出身だ。
「もともと丹波焼は大きな甕など商売に使うものが多かったのですが、民藝運動によって生活道具をつくるようになった窯のひとつが丹窓窯。僕はいまの生活のなかで使いやすいものや、生活に根ざしてものをつくっている人を紹介していきたいと思っています。立杭の窯から独立してがんばっている人を強く推したいですね」
焼き物は基本的に作家が自由につくったものを置いているが、吉成さんが作家にはたらきかけてプロダクトに落とし込んだものもある。黒谷和紙の職人ハタノワタルさんがつくる和紙雑貨は、気軽に使えそうなかわいらしいもの。
「和紙だけで生計を成り立たせるのはなかなか難しいですが、ハタノさんはこういう雑貨をつくるのが得意なんです。ハタノさんにはつくることに専念してもらって、僕が単価や使い勝手などを考えて商品化していく。役割分担しながら一緒につくるという感じです」
ほかにも丹波布を織ってくれる人を探し出し、手つむぎの糸で伝統的な縞柄を機織りで織ってもらい反物をつくって卸すなど、プラグだけで売るのではなく、プラグ発で丹波の手仕事を紹介していくような仕事もしている。
「いいものは、長く続くと思っています。大量につくって儲けようと思ったらそういうやり方もあるけれど、そういうものは長く続かないでしょう。僕はずっと残っていくものをつくる人たちと一緒に、できるだけ地に足をつけてやっていきたいです。ものができあがったらすぐ取りに行けて、意見を交わせるような人たちのものを売っていきたいと思っています」