コラム

香川県高松市・まちのシューレ963 後編

別冊コロカル 第1回 香川県高松市

香川県高松市・まちのシューレ963 後編
マガジンハウスのwebマガジン『コロカル』と連動し、全国のすてきなお店を訪れます。瀬戸内を中心に集められた食品と雑貨セレクトショップ・まちのシューレ963の後編です。

香川のいいもの、おいしいものを全国へ発信。

広々とした1フロアに、カフェや食品などのさまざまな売り場がぎゅっと詰まったセレクトショップ、「まちのシューレ963」(以下シューレ)。

前編でもいくつかの売り場を紹介したけれど、シューレの目玉とも言えるのは、店の一番奥にある、「さぬきもの」が集められた工芸のコーナーだ。ここには、香川の伝統工芸品が多数置かれている。(⇒「まちのシューレ963 前編」はこちら

どれも伝統工芸とは思えないほど、モダンなデザインのものばかり。特に女性に人気というのが、「讃岐かがり手まり®」。一度は途絶えかけていた文化を、ひとりの女性が復活させたのだという。

昔ながらの技法を忠実に再現し、草木染めの木綿糸を使っている。そのため、やわらかい風合いの色で紡ぎ合わされた模様は、どこか北欧の刺繍デザインのようにも見える美しさ。

香川でつくられている工芸品やインテリアが集う。写真中央に並べられているのが讃岐かがり手まり®。右手にあるのが高松張子。また、ここは丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館のオリジナルグッズが買える貴重なお店でもある。
香川でつくられている工芸品やインテリアが集う。写真中央に並べられているのが讃岐かがり手まり®。右手にあるのが高松張子。また、ここは丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館のオリジナルグッズが買える貴重なお店でもある。

その他にも、赤いドット柄の漆器や高松張子などキュートなものから、盆栽などの渋めのものまで、あらゆるさぬきものが揃う。

「盆栽は、香川は最大の生産地なんです。お手頃な価格のミニ盆栽を、県外の方がおみやげとして買って行かれるケースも多いです。もっともっと、香川のいいものをたくさん発信していきたいですね」とシューレのマネージャーを務める今村佳子さんは話す。

今村さんはそれぞれの香川のつくり手さんについて事細かに説明してくれるが、やっぱり今村さんも香川の人?と伺うと、

「いや、北海道出身なんです(笑)」と意外な答えが返ってきた。

今村さんが手に持っているのは、愛媛産ぽんかんの入浴剤。「地元のおばあちゃんたちがジュース用にひとつひとつ手でむいたぽんかんの皮を利用した、愛媛県の無茶々園の入浴剤です。他に化粧水もありますよ」
今村さんが手に持っているのは、愛媛産ぽんかんの入浴剤。「地元のおばあちゃんたちがジュース用にひとつひとつ手でむいたぽんかんの皮を利用した、愛媛県の無茶々園の入浴剤です。他に化粧水もありますよ」

「たまたまHPの募集を見て、高松まで面接を受けに来たんです。マネージャーになってからは各売り場の担当スタッフと相談しながら、商品を決めたり、イベントの内容を決めたりしています」

これだけ広いスペース、たくさんのジャンルの商品を、どう見せるか。イベントと連動させながら、よりよい売り場づくり考えているのだそう。

「石村さんは、 “おもてなしの精神”をとても大切にされている方です。奈良のくるみの木は、接客・ディスプレイ、その他店の隅々まで、石村さんのおもてなしの心が行き届いているように感じます。シューレはまだまだ及びませんが、わたしたちが今できるおもてなしを、スタッフひとりひとりが考えながら行動しています」

ギャラリーの奥には、作家の作品が並ぶ。贈り物に少しこだわりたいときはこちらでゆっくりショッピングを。
ギャラリーの奥には、作家の作品が並ぶ。贈り物に少しこだわりたいときはこちらでゆっくりショッピングを。

また、シューレの中心には、キッチンスタジオを設けられていて、普段は売り場の一部となっているが、月ごとに料理教室やワークショップが開かれている。ちなみに8月の予定のひとつは「和のおやつ」教室。

「洋菓子と比べて、和菓子はなかなか自宅ではつくられないイメージがあるので。階段を1段上がるような気持ちで、新しいことに挑戦するきっかけになればと思っています」と今村さん。

香川の「山清」がつくるこだわりの「あんこ」など、地元食材も一緒に紹介されるのだそう。そして、ギャラリースペースでは、香川の作家はもちろん、全国の面白い展示も巡回されてくる。

カフェでは、旬の素材を使って毎月変わるランチやスウィーツが楽しめる。シューレ視点でセレクトされた商品を買いにくるだけでも楽しいが、季節ごとに更新されていく暮らしの情報をチェックする面白さがシューレのもうひとつの魅力だ。リピーターが多いというのも納得。

着心地のよさそうな衣服が並ぶ。大橋歩さんのブランド「a.(エードット)」も置かれている。
着心地のよさそうな衣服が並ぶ。大橋歩さんのブランド「a.(エードット)」も置かれている。

さらに、気持ちのよい春〜夏の期間には、植木鉢が生い茂るテラスで、月に1〜2回「庭マルシェ」と題して、有機野菜や天然酵母パン、おやつの店が並ぶ。

「香川のおいしいものを通して、生産者のみなさんと、お客さんの交流の場になっています。直接コミュニケーションをとれるのはお互い楽しいようです。そんな風に私たちもひとつひとつイベントをつくりあげながら、輪が広がり、また新しいイベントにつながっている感じですね」

そう楽しそうに話す今村さん。自らが通って気に入ったお店に、イベントを相談することもあるという。

「シューレが高松にできて、ほんとうにうれしい、ありがとう!と言ってくださるお客さまがたくさん居るんです。それがいちばんうれしいですね。香川での基盤を保ちつつ、これからは“さぬきもの”を、県外にも広めていきたいです」

石村さんが実践してきた“おもてなしの心“を受け継ぎ、若いスタッフたちが、着実にシューレを進化させている。全国のネットワークとつながりながら、楽しいさぬき暮らしを発信していくシューレに、これからも目が離せない。

ランチは、毎月2回メニューが変わる。写真のメニューは、とうもろこしのごはん、スズキの味噌くるみ焼き、蓮根とコリンキー(カボチャの一種)の煮物、里芋のポテトサラダ、新さつまいもとモロヘイヤのみそ汁。
ランチは、毎月2回メニューが変わる。写真のメニューは、とうもろこしのごはん、スズキの味噌くるみ焼き、蓮根とコリンキー(カボチャの一種)の煮物、里芋のポテトサラダ、新さつまいもとモロヘイヤのみそ汁。

>>マガジンハウスのwebマガジン『colocal』では、まちのシューレ963でも器の取り扱いがある陶芸家・田淵太郎さんのアトリエを訪ねました。

⇒くわしくはこちらをどうぞ:COLOCAL

 

 

文・塚原加奈子 写真・嶋本麻利沙

まちのシューレ963

【住所】香川県高松市丸亀町13-3 高松丸亀町参番街東館2F【電話】087-800-7888【営業時間】物販11:00~19:30、カフェ11:30~18:00(オーダーストップ17:30)※金土日のみ~22:00(オーダーストップ21:30)第3月曜日休 (祝祭日の場合は振替有)

http://www.schule.jp/