冷やし過ぎはNG! ビールの最適な温度を知る
夏は冷たーいビールを飲みたくなります。ここ数年は極限まで冷やしたビールが大流行。しかし、「クラフトビールは冷やし過ぎに注意してください」と、日本ビアジャーナリスト協会の福岡モモコさん。
「冷やしすぎるとクラフトビールの命とも言える華やかな香りや味が感じにくくなってしまいます。クラフトビールにはそれぞれ、飲んでおいしい! と感じる適温があるのです」
例えば、前回ご紹介した「よなよなエール」や「インドの青鬼」の適温(ツウ好みの温度)は13度。意外と高い温度ですが、グラスに注いだときに一番華やかに香りが開く温度なのです。
早く冷やさないと! と、冷凍庫でグラスを凍らせたり、はたまたビール自体を冷凍庫で冷やしたり...... 実はこれ、「せっかくのおいしいクラフトビールがもったいない!」のだそうです。冷蔵庫で冷やしたら、少し室温で戻すといいのだとか。ちょっとした我慢が、よりクラフトビールをおいしく飲むコツなのです。
また、福岡さんのおすすめは、冷蔵庫よりも温度が高い野菜室で冷やすこと。これなら冷やしすぎる心配がありませんね。
クラフトビールを味わう必須アイテム!
さて、適温で冷やしたクラフトビールですが、そのまま缶やビンに口をつけて飲むのはもちろんNGです。
「ちゃんとグラスにあけて飲みましょう。グラスに注ぐのは“香りを立てる”という目的もあります」
グラスにあけて飲むと、必然的に鼻とビールの位置が近くなるので、ビールの香りを堪能できるという利点が。福岡さんに「よなよなエール」をグラスに注いでいただきました。グラスの半分くらいまで勢い良く注いだら、泡が落ち着くまで少々待ちます。最後は泡をもちあげるようにゆっくり注いで完成。
「あとは、色もよく見てください。ビールの種類やメーカーによって色もずいぶん違うんですよ」と福岡さん。
濃い黄金色のなかで、穏やかに立ちのぼる繊細な泡にうっとり!
ビールの色も楽しみたいと言う福岡さん。陶器のグラスや、銅製のグラスなどさまざまなビアグラスがありますが、やっぱり透明なガラス製のものがお気に入りだそうです。屋外で飲む場合も、透明なカップを持って行って、缶やビンから注いで香りも色も楽しんで飲む。これこそ、ビール好きのスタンダードですね。
もうひとつの福岡さんのグラスへのこだわり。それが、グラスの厚さです。福岡さんが持ってきてくれたグラスは、ごく薄いガラスのグラスと、厚みと重みのあるグラス。薄いグラスはビールの温度をグラス越しにも感じられ、飲み心地重視のときに使うのが良さそう。またビールは炭酸感がたまらない! という人にもおすすめなのだそうです。
「私はピルスナースタイルのビール(すっきりとしたラガービール)はこのグラスで飲みます」
一方で、厚みのあるグラスは、ビールのゆったりとした甘みを感じられます。
「このグラスは、ブラウンエール(黒っぽい麦芽からつくられるエールビール)などのモルトの甘みを堪能したいときに使っています」
また、赤ワイン用のワイングラスはハイアルコールビールをゆっくり楽しむのに最適。アロマを十分に感じられるそうです。
おもてなしにも使いたい。ビールと合うおつまみとは?
おいしいビールに合わせたい、おいしくて簡単なおつまみ。福岡さんは、ワインのマリアージュのように、クラフトビールの特長によっておつまみを変えます。福岡さんがおすすめする、ビールとおつまみの組み合わせはこちら。
「よなよなエール × 窯焼きチキン」
「よなよなビアキッチン」でも太鼓判を押す王道のペアリング。
なんでも、よなよなエールの味・風味の特長に合わせて窯焼きチキンが開発されたというエピソードが。店内の窯で豪快に焼かれたチキンのジューシーさと香ばしさにビールがすすむすすむ! みんなで取り分けて食べれば、より一層ビールがおいしく感じられることでしょう。
窯焼きチキン ¥980(クオーター) / ¥1,800(ハーフ) / ¥3,500(フル)
よなよなビアキッチン 赤坂店
「TOKYO BLACK × 粒チョコレート コリアンダー」
TOKYO BLACKの濃厚なコクと、チョコレートの風味がベストマッチ。チョコレートに入ったコリアンダーシードが爽やかな後味を演出する、まさに大人のおつまみ。ピチピチはじけるビールの炭酸感ともよく合います。
「コリアンダーのクセのある風味が濃厚な黒ビールとよく合います」
粒チョコレート コリアンダー ¥1,400
ESOPHONIA
「馨和KAGUA Rouge × 酒盗&クリームチーズ」
どうやら、国産のビールは和の食材にも合うようです。酒のアテ代表・酒盗にほんの少し手間をかけることで、おしゃれなおつまみに。酒盗の塩気にクリームチーズの酸味が効いて少量でも満足感があります。ゆっくりとクラフトビールの旨みと香りを味わいたいときにイチ押しの組み合わせです。
KAGUA Rougeのスパイシーなフレーバーとずっしりとしたボディーは、ワインファンをも虜に。馨和 KAGUA Rougeの他に、〈馨和KAGUA Rouge Special Edition2013〉や、〈馨和 KAGUA Blanc〉なども販売中。
「富士桜高原麦酒〈ラオホ〉 × いぶりがっこ&クリームチーズ」
秋田の郷土料理・いぶりがっことクラフトビールとは驚きの組み合わせ。
「〈ラオホ〉とは“燻煙”という意味。いぶりがっことは同じ燻製同士なので、相性がいいはず」と福岡さん。
麦芽を乾燥させたときにスモークを施すそうで、独特のビールの香りや渋みとクリームチーズのまろやかさのバランスが絶妙。さらに、いぶりがっこの歯ごたえの良さもいいアクセントになっています。
山梨でビール造りを行う富士桜高原麦酒は、国内外で数々の賞を受賞している実力派ブルワリー。〈ヴァイツェン〉は「ワールド・ビアカップ2014」の「South German-Style Hefeweizen (南ドイツスタイル・ヘフェヴァイツェン)部門」で、本番ドイツのブルワリーをも抑え、銀賞を受賞しています。
せっかくおいしいビールを家で飲むならば、少しの手間を惜しまないのが大切です。でも、それもうまくできる自信がないときには、全国各地で行われているビアフェスを利用しましょう。
「ビアフェスやクラフトビールのイベントなどは一度に飲み比べできるチャンスです。全国から大小さまざまなブルワリーが出店していますので、足を運んでみてはいかがでしょうか」
「けやきひろば 春のビール祭り」(埼玉・5月29日〜6月1日)や、「ニッポンクラフトビアフェスティバル」(東京・8月1日〜2日)は国内最大級のクラフトビールのイベント。ブルワリーのスタッフや、ビール職人さんとふれあい、全国のご当地ビールを知ることも、国産クラフトビールの楽しみ方のひとつかもしれませんね。
まだまだ奥深いクラフトビールの世界。ひと口飲めば、いままでのビールの常識を覆すような体験ができるはずです。この夏は“ビール党”の人も“国産クラフトビール党”でいかがでしょうか?
文・海老原悠 写真・ただ(ゆかい)
撮影協力:よなよなBEER KITCHEN 赤坂店
よなよなBEER KITCHEN 赤坂店
【住所】東京都千代田区永田町2-14-3 東急プラザ 赤坂2階
【TEL】03-5510-4789
【営業時間】11:30~23:00(L.O. フード 22:00、ドリンク 22:30)
*平日16:00まではランチメニューのみご利用いただけます